【女子部㉞】女子部解体新書vol.2~青木涼選手編~

こんばんは。

女子部コーチの岡です。

 

女子部解体新書シリーズ、二番手をつとめるのは3年コックスの青木涼選手です。

 

コックスながら誰よりも溌溂とトレーニングに挑む姿が、部内でも異色の存在感を放っています。

大胆さと繊細さをあわせもつ彼女のコールに、レース本番も期待しています。

 

是非お楽しみください。

 

 

2022814日・山中寮にて~

 

 

岡 :よろしくお願いします。

青木:よろしくお願いします!

 

岡 :それでは、お名前と生年月日をお願いします。

青木:青木涼です。2001917日生まれです。

岡 :インカレが終わった後ですね。

青木:フライの間に21歳になります。

 

岡 :名前の由来を教えて下さい。

青木:すごく単純なんですけど、生まれたのが9月で、ちょうど残暑が厳しかったらしくて。母親が妊婦さんで、お腹も大きくてとにかく暑かったらしく、「涼しいのがいいなあ」というお母さんの願いから「涼」になりました。

岡 :つまり、「こういう子になってほしい」的な願いではなく……

青木:そのときの希望ですね。「涼しくあれ!」みたいな。衝動的に決まったから、意味は特にないんですよ。字画とか調べると「大凶」とか出てきて、「あれ!?」みたいな。全然、そういう画数のこととかも考えなかったらしくて。ちなみに妹は「柚」なんですけど、妹は12月生まれなので、冬至といえば「柚」みたいな。シンプルですね。

岡 :でも、「涼」っていい名前だよね。

青木:自分でも気に入ってます! 小さい頃は、もっと可愛い名前というか、女の子らしい名前がいいなって思ってたんですけど。今は、わかりやすいし、他にあんまりいないし、いいなあって気に入ってます。

 

岡 :好きな食べ物と嫌いな食べ物を教えてください。

青木:好きな食べ物はカレーです。嫌いな食べ物はセロリです。

岡 :セロリ……

青木:セロリは匂いが嫌いで。もずくも嫌いだったんですけど、もずくは頑張れば食べられるようになって。でも、セロリだけは、スライス一つ入ってるだけでも「あっ、いるな……」ってなります。息を止めれば食べられます。セロリを食べてるというより、ただ摂取するだけというか。

岡 :何カレーが好きですか。

青木:インドカレーが好きなんですけど、ネパールカレーも、また違った感じで好きですね。エスニック系が好きです。色んなカレーを調べて作ったりするんですけど、日本で言うカレーって、人参と玉ねぎとジャガイモと肉じゃないですか。でも、カレー文化が主流な国だとちょっと違って、野菜を切って炒めて、そこにスパイスを入れたもの全般を「カレー」と呼ぶらしいです。定義が広くて、「何入れてもカレーになるよ」みたいな。自由さがあって。カレーの定義に揺らぎが生じつつも、カレー全般は好きですね。

 

岡 :趣味は何ですか。

青木:ランニングと、舞台を見に行くことが好きです。あと、歌うのも好きです。

岡 :舞台というのは?

青木:ミュージカルがすごく好きで、小3のときCATSを見に行ったんですけど。それが、小学校の同級生の親戚が劇団四季のトップ?の方で、そのコネクションだったのか、貸し切りで見せてもらって。しかも私の席が、一番前の、一番真ん中の席だったんですよ。そこからすっごく好きになっちゃって。チケットはけっこう高いんですけどね。

岡 :ちなみにいくらですか?

青木:いい席だと、12000円とか。一気にお金が飛んでいきますね……

岡 :舞台を見に行くときは、何を楽しむんですか?

青木:ものによります。「この俳優さんのこういう役どころが見てみたい」というときは、演技とか、ストリー性を重視します。「このミュージカルのこの歌が名曲」みたいなのがあったりすると、曲をメインで見に行きます。

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岡 :獣医学科を選んだ理由を教えて下さい。

青木:もともと、すごく動物が好きだったので。直接動物と関われるような職につきたいと思いました。文科Ⅱ類だったから経済学部に行きそうだったんですけど、それがすごく嫌で。というのは、就活をしたくなさすぎたんですよね。理系だったら就職するの遅いし、獣医ならさらに手に職をつけられるし、院試もない!って思って。あとは、私、都会はもう十分経験したので、北海道とか、鹿児島とか、広々したところで働いてみたいっていうのがありました。

あとは実家で犬を飼ってて、その子はもう死んじゃったんですけど。そのとき、運命のようなものも感じました。「この子が死んだってことは、獣医学科に行けってことなのかな」みたいな。

岡 :犬が亡くなったのって、確か2年生の時だったよね。

青木:そうですね。東商戦が519日で、その日に死んじゃって。ちょうど東商戦前の時期は膝を痛めてて、ずっと家にいたんですけど、レースの日だけ、手伝いで戸田に行かないといけなくて。戸田から帰る途中で、亡くなったって連絡が来て、それがすごくショックでした。行かなければ死に目に会えたのに、とか、漕艇部行かなければよかった、とか、そういうふうに思っちゃって、ちょっと病んで。そこから、1か月休部をしていました。その子とはずっと一緒だったので。

 

岡 :どうして東大に入ろうと思ったんですか。

青木:私、高2までは理系だったんですよ。医師になりたかったので。でも途中で、「私、別に医師になりたくはないな」って思うようになって。それから文系に転向したんですけど、転向したらしたで、「文系で就職したら営業職とかになるのかな」って、どこか決めつけちゃって。営業職って、ノルマがどうとか、ストレスがどうとかって聞くので、そんなのはやだなと思い、大学に入ったら理転したいなって思って。それができるのは東大だなと。今思えば、視野が狭かったなって思うんですけどね……。営業職以外でも、文系で面白い職業いっぱいあるじゃないですか。でも、謎の決めつけと、あと受験で病んでたのもあって、そのときは「このままじゃ私の未来は暗い」と思い、東大を目指すことにしました。

あとは、東大の学園祭に来たときに、「ハリーポッターみたい!」って思って。法文館のアーチとか、すっごくかっこいいし、安田講堂もいいし。私、小学校も中高もビジュアルで決めたところがあって。建物がきれいとか、廊下が広いとか、そんな理由で選んでました。中高の廊下は、本当に走れるくらい広くて、「廊下は絶対走った方がやりやすい」と思ってました。

 

岡 :小さい頃はどんな子どもでしたか。

青木:ケガが多かったですね。今でも残ってるんですよ。この前向井さんにエルゴ見てもらったときも「ケガ多くない?」って言われて、あらためてそうだなと思って。ケガのあとが、これもそうだしこれもそうだしこれもこれもこれも(見せてくれる)……。すごく転んでたんだと思います。とにかく走ってたし、高い木があれば登るし、そこからジャンプするし。すごくお転婆だったんですよね。祖母も「ケガは勲章だ」みたいなことを言ってくれて、私も「あっ、そうだな」みたいな。積極的にケガしていこうと。今思えば、もう少しおとなしくしてれば、こんなに足もぼこぼこにならなくて済んだのにって思うんですけど……あと、お転婆だったくせして、めっちゃ人見知りでした。

岡 :どんな人見知りでしたか。

青木:初対面の人と話すときは、まず真顔になっちゃってました。自分では笑ってるつもりなのに、目が全然笑ってないとか。あと、自分の今いるコミュニティを大事にしすぎて、新しい子に対して優しくなれないとか、そんな感じもありました。

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岡 :自分を色にたとえると何色ですか。

青木:ええー、でも、好きな色は緑色です。

岡 :生命力のある色ですね。似合いますね。

青木:自分を色にたとえたこともなかったですけど、でも、好きな色なので緑で! ちなみに服は青系が好きですね。「青木」「涼」なので、名前も青っぽいかも。

岡 :そういえば今日の爪は緑ですね。

青木:そうなんですよ。今回の避暑合宿を乗り切るために、何か武器が必要だと思って。初めてネイルをしてみました。実は昔から爪を噛む癖があって、人より爪が短いんですけど、それをネイルでなんとかしてみました。

岡 :とてもきれいにできてますね。

 

岡 :どんな人が好きですか。

青木:私がいつも異性として付き合いたいとか、タイプの人とか聞かれたときは、「私をずっと笑わせてくれる人」と答えています。流れ星(お笑いコンビ)のちゅうえいみたいな。「どこからそんな発想出てくるの!?」みたいな人が好きで。どんなに馬鹿でもいいから、私を笑わせてくれたらそれでいい!みたいな。今まで出会ったことないし、好きになったこともないんですけど……。今まで出会って一番面白かったのは、学連の藤原さんです。

岡 :でも、「ずっと笑わせてくれる人」って、なかなかいないんじゃ……

青木:そうですね、うーん、「私と笑いのツボが合う人」っていう意味かも。馬鹿々々しいことをしてくれる人。そんな人と出会ってみたい。

岡 :どこに行けば会えるんでしょうか?

青木:吉本の芸人の卵とか、「私が養うから、その代わり私を笑わせて」ということで、飼うのもありかなと。ヒモとして。

あと最近、映画「タイタニック」を見たんですけど、「ジャックみたいな人だったら……」とも思ってて。

岡 :ジャックって誰ですか?

青木:レオナルド・ディカプリオなんですけど。あの絶望的な状況下でも、最後まで生きることを諦めないんですよ。彼女はお金持ちのお嬢さんで、ローズっていうんですけど、ローズのことを最後まで励まして、「大丈夫だから」って言い続けて。最後、もう船が真っ二つに割れて沈んでいくんですけど、二人は沈んでいく船のここ(舳先)にいて、そんな状況でも、ジャックは「このタイミングでこう息を吸ってジャンプすれば絶対死なないから」みたいなことを言うんです。ローズは生き残って、ジャックは死んじゃうんですけど、ローズに対して言う最期の言葉が、「生きることを諦めるな」なんですよ。ああこういう人がいいわ!って思って。そんな生命の危機に遭いたくはないですけど、そういう絶望的な状況でも、「もう無理だ」とか言わない人がいいなと思います。

岡 :タイタニック見たことないんですけど、ちょっと興味が出てきました。

青木:是非見てみてください。

岡 :ネガティブな状況になった時はどうするんですか。

青木:絶望的な状況にあまり置かれたことがないのでわからないんですけど、「心配事の9割は起こらない」と言うじゃないですか。私はそれを自分に言い聞かせて、美味しいものを食べて忘れるようにしてます。その相手ともそうするのかな。もしその人が落ち込んでたら、一旦その人を一人にしちゃうかも。「私ちょっと出て行くから、そのネガティブを私にふりまかないでね」ってなっちゃうかもしれないですね。そのネガティブを二人で背負おうとはしないと思います。

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岡 :生きるにあたって大切にしてることは何ですか。

青木:ポジティブでいることですね。辛い時こそ笑顔、というか。漕艇部に入ってから、打ちのめされるようなこともあったんですけど、女子部は特に、みんなでずーんって落ち込んじゃう傾向があるなって。そういうときでも、「私が何とかしてやるぞ」くらいの気概でいるようにしています。

逆に岡さんは何ですか?

岡 :え……(選手に聞いておきながら、自分は何ひとつ考えていなかったので頭まっしろ)……なかなか思いつかないですね。ちょっと前は「人に優しく、自分に厳しく」をモットーにやってましたけど、最近、それもちょっと違う気がしていて。なんというか、これまで生きてきて、人に受けてきた恩って、すごくいっぱいあるなと思ってて。子どもの頃も、ボート部の頃も、職場でもそうで。だから、そういう他人の気持ちに応えられる人間でありたいとは思ってます。受け取ったことに対してちゃんと返したい。その人に直接じゃなくても、ちがう形でも良いので返したいですね。つまり義理人情でしょうか。

青木:武士ですね。仁義。

岡 :侍は好きです。できれば幕末に生まれたかったかな。

 

岡 :タイムマシンを使えるとしたらどこに行きたいですか。

青木:うわあ~、タイムマシンですか。なんだろう……でも、見てみたいものはたくさんありますね。世界史好きだったので……あっ、たとえば、南アメリカの、白人が植民地化する前の、アンデス文明とかの時代が好きですね。なんか独特で、想像力があるんですよ。ポカホンタスみたいな。それを見てみたいですね。

岡 :浅学にしてわからないんだけど、どんな文明なんでしょう?

青木:車輪の原理がないんですよ。軸があって回るものがない。だから、ろくろとかもなくて、その分すっごい独創的なツボとか器とか、そういうのをあの人たち作るんですよ。世界史の資料集で、そういうの見てるのが好きでした。あと、マチュピチュとか……どんな人たちが住んでたんだろうって思って。文献に残ってないので、見てみたいですね。神秘的っていうのもあるし、あと、世界史の中でも、かわいそうな歴史が好きなんですよね。「植民地化されて虐殺されてしまいました」とか、悲しい話なんですけど、その刹那的な感じが好きで、おまけに覚えやすいし。「ああコロンブスが来たばっかりに」みたいな。

岡 :確かに彼が来なければ……

青木:そうなんですよ。コロンブスが来なければ、今もそういう文明が残ってたかもしれないわけですよね。大航海時代って言いますけど、よく考えたらすごい自己中心的な話じゃないですか。「見つけた土地は俺のもの」みたいな。そういうのがなければ、もっと豊かな世界だったのかもしれないって思います。

 

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岡 :そもそもなんでボート部に入ろうと思ったんですか。

青木:もともと大学に入ったら運動がしてみたいと思ってて。たぶん自分は運動が得意って思ってて、それを試してみたい気持ちがありました。それで運動部を探してたんですけど、私の入学したときって、ちょうどコロナの時期だったんですよ。その数少ない出会いの中で出会えたのが、ラクロス部、ホッケー部、漕艇部の3つでした。でも、私、本当に接触競技が苦手で。自分の陣地が守られていないと、どうしてもダメで。バレーとかテニスとか水泳とか卓球とかはできるけど、サッカーとかバスケはダメ、みたいな。そしたらラクロスもホッケーもダメだと思って、そしたらもう「漕艇部しかないじゃん」みたいな。で、試乗会に行ってみたり、同期の小栗に出会ったりもして。あと、森田さんが新歓担当だったんですけど、すごくいい人だったから、「じゃあ入るか」みたいな感じで入りました。

 

岡 :ボート部やってて、嬉しかった瞬間は。

青木:やっぱり、今年の京大戦はすごく嬉しかったです。一番嬉しかった。

岡 :どこが嬉しいポイントでしたか。

青木:うーん、予定調和にない勝利。最初はちょっと負けてたし、ほんとに、どっちが勝つかわからなくて。でも、本当に練習の成果を発揮して、自分もその勝利に貢献できた気持ちもあって、すごく満足のいく勝利でした。相手の健闘も伝わってきて、すごくいい試合だったし、その上で勝てたから、本当に嬉しかったですね。

岡 :見に行かなかったことをとても悔やんでます。

青木:もしタイムマシンがあったら……

岡 :私は2022626日の瀬田ですね。

青木:確かに、その場で喜びを分かち合えたら、それはそれで嬉しかったかもしれないんですけど。でも、女子部に関わってくださる皆さんは、いつほさんもそうですけど、遠くから見守ってくれてるのを感じます。遠くからでも存在を感じるし、遠くにいたとしても、お互いのできごとを喜び合えている感じがして。そういう意味で居心地がいいですね。


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岡 :ボート部でしんどかった瞬間は。

青木:今年の東商戦の対校フォアに乗るコックスを決めるときに、選考で負けたあたりですね。「青木はあんまり練習してない」とか言われたりもして。コックスに向いてないなって思いました。器用じゃないというか……いや、自分のメンタルを保つとか、自分が生きることについては、割と器用な方だと思うんですよ。だけど、自分が動かずに相手に何とかしてもらうというか、そういう働きかけがすごく不器用だなって。コックスをやって初めて、自分のそういう不器用さに気づきました。それができる人に変に嫉妬しちゃったりとか……あのときが一番きつかったかな。

岡 :そこをどう乗り越えましたか。

青木:とにかく走ったんですよ。ランニングが好きなので。頭の中で、色んなことがぐちゃぐちゃになっちゃって、とりあえず走りに行こうって。走りながら、この気持ちを文章に残しておきたいなと思って、それは女子部のブログ(続けること (utrcwomen.wixsite.com)に書きました。

その後、オープンフォアに乗るってことになって。でもそのクルーの中で、いつのまにか、深く話し合うってことができるようになってたんですよね。「この動きってこうだったよね」とか。それまでは感覚が鈍くて、あんまりそういう話ができなかったんですけど、その感覚が急にわかるようになったり。あと、自分が発言することで相手に影響を与えたり、気づきを与えられたりする経験があって、それがすごくおもしろいと思って。「なんだ、私できるじゃん」みたいな。クルー選考の時は、「自分がダメだったから。相手が優れてたから」って思ってたんですよね。もちろんそういうところもあるとは思うんですけど、そうじゃなくて、相手のクルーに私が合わなかったのもあるんじゃないかって、思えるようになって。だからこそ、今私を選んでくれたこのクルーと一緒に頑張っていこうって思えるようになりました。それがコックスとして嬉しくて。自分の成長が目に見えて、嬉しかった瞬間ですね。そのクルーは今でも本当に大好きです。艇速は全然出なかったんですけどね。

岡 :それは本当によかったね。しんどかったと思うけど、そこから這い上がって来られたのは、何よりも青木の力ですね。

青木:それからも、小さい「嫌なこと」ってちょくちょくあるんですけど。そういうとき私は、来年のインカレナイトの、自分の引退スピーチのことを考えるようにしてます。どうやって恨みがましく言ってやろうかな……と。「こう言ったら傷つくかな?」「おっ、この言い回しいいな」みたいに、どうやって復讐するかを考えて、そこですっきりして終わらせることもあります。

岡 :それは是非やってほしいですね。忘れないように、今からメモっておいてください。

青木:ランキング形式で発表してもいいかもしれませんね。

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岡 :ボート部で、自分が変わったなって思うところはありますか。

青木:んー、なんか、明るくなったなって思います。自分のポジティブさを求められる場面が多くなったというか。チームの中で、人よりも動けるってことを自覚しているのがあるかもしれません。体格も大きいし、心肺機能も人よりちょっと高い、筋肉はわからないですけど、運動神経もちょっと良い方で。だから、女子部の中では、苦しい時も声を出せる人だって思っていて。それもあって、苦しいときこそポジティブな発言をするべきって思うようになりました。自分のポジティブさをアウトプットすることによって、自分もよりポジティブになっていくみたいな。自己暗示じゃないですけど、「自分ならこういう発言ができるはず」みたいに思ってます。もうちょっと中高時代は病みやすいというか、ねちねちした人間だったはずです。

岡 :確かに、クルーミーティングや女子部ミーティングを聞いてると、青木は必ず「これがおもしろかった」「あれが楽しかった」っていう発言をしてくれるよね。

青木:小栗とか石綿とか、同期にでも変わったねって言われます。「人のことを思いやれるようになったね」とか……舞桜ちゃん(小栗)からは、「素直になったね」とも言われました。自分のやりたいこと、伝えること、発信すること、受け取ること、そういうところがすごく素直になったよねって。

岡 :青木と小栗っていい関係性だよね。

青木:そうなんですよ。相手の発言を全肯定しないし、おかしいなって思ったら舞桜ちゃんも言ってくれるし、相談し合えるし、本当に唯一無二の存在だなって思います。頑張ってる同期の女子が近くにいるだけで全然心持が違うし、来年も、「2人で頑張ってこう」って話してます。

 

岡 :ボート部に入っても、自分が変わらないなって思うところ。

青木:割と一人が好きなところですかね。急にぽんって思いついたんですけど。合宿生活に慣れてきても、家に帰る時間がないとどうしてもダメで。みんなと過ごしてる時間は楽しいし、合宿してる間はストレスに感じてないんですけど、家に帰ると一気に疲れが出て、「実家最高!」って思いますね。あとは、みんなの成長を喜ぶ気持ちももちろんあるんですけど、自分の小さな成長を感じる方がより好きだったりします。だからシングルスカルは好きですね。本当に一人だけの時間なので。なので、自分と向き合う時間を大切にしてるところ、が変わらないところなのかな……いや、なんかもっとありそうなんですけど。

あと、ちょっと話それますけど、コロナで籠城している期間に、外出許可も取れるようにシステムを変えて下さった幹部の方々は、ほんとにすごいなと思ってます。自分達だって帰りたいはずなのに、リスクを天秤にかけて色々決めてくれて、でも決めたことに意固地になることもなく、柔軟に対応してくださって。少しでもみんなが過ごしやすいように改善を重ねてくれて、ありがたいし、一歳しか変わらないとはとても思えないですね。

岡 :今年の幹部陣は本当にすごいよね。自分の現役時代は、そもそも選手はそういうことにあまり関与していなかったので、良い時代になったと思う。04はそういう意味でも素晴らしい代だと思います。

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青木:あっ、今、「自分が大切にしてること」っていうので思いついたんですけど。ポジティブというのもそうだけど、「面白がること」の方が近いかもしれません。

岡 :青木っぽいフレーズですね。「面白がろう」と思って面白がれるのは、一つの才能だと思います。

青木:あんまり考えてないだけ、とも言えるかもしれません。「まあいっか、なんか面白くない?」という感じです。

 

岡 :ボート競技の魅力をお願いします。

青木:風と広い空、ですね。初めて感動したのは、スカル漕いでたとき、2000m開放の日だったことがあって。0500mの水域に入った時に「わあ、空が広い」って思ったんです。絶対、それまでの水域でも見えるはずなんですけどね。そこに入った瞬間、なぜか「わあ~」って思って。急に空の広さを認識しました。

岡 :0500mって何か違いましたっけ?

青木:いや、空については特に違わないはずなんですけど。なぜか思ったんですよね。見たことのない器具があったり、ポンツーンがあったり、観客席がずらって並んでたり……あの異様な空間と、ぽっかりあいた大きな空が印象に残ってます。

あとは、初めての乗艇で感じたのが、速さと風ですね。風がとにかく気持ちよくて。それは今もずっと変わりません。ユニフォーミティーとか仲間との絆とか、そういうのも魅力ではあるんですけど、私は「空と風」をずっと推してます。

 

岡 :ボート部の魅力をお願いします。

青木:なんだろうなあ……(熟考)……人に恵まれてるところですかね。たとえば岩井さんとか、すごく厳しいトレーニングを課してくるんですけど、それをあんなに許せてしまう人ってなかなかいないですよね。あのフォルムと、声のトーンと……稀有な人だと思います。ダントツとか課されたら、普通「何を!?」って思いそうだけど、それを思わせない。岩井さんが「やってみましょうよ!」って言ったら、「岩井さん、やります!」みたいなテンションになれるんですよね。そんな人に出会えて面白いです。

女子部に関わってくださってる方もそうですね。いつほさんも岡さんも前川さんも、それぞれ違って面白いですよね。しかもみんな、ちょっと人と違うというか。

岡 :それはそうかもしれません。

青木:私たち学生の言うことにちゃんと耳を傾けて、かつ一人の人間として扱ってくれて、偉ぶったりしない。そんな大人たちがたくさんいることは魅力ですよね。

あとは、同期は尊敬できるところも面白いところもたくさんあるし、先輩方も後輩もそうですね。特に先輩に関しては、面白いなって思うところたくさんあるし、そんな人たちに囲まれて練習できること、日々過ごせることが幸せだなと思います。たとえば平川さんとか……かっこいいってイメージあると思うんですけど、この写真とか(見せてくれる)、ちょっと面白過ぎない?と思います。

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青木:「自分が変わらないと思うところ」をもう一回考えたんですけど、ちょっと冷淡なところがあるのは変わらないかもしれません。たとえば、今は多様になってきてたところもありますけど、漕艇部の価値観になかなか合わない人がいたときに、「合わないの? じゃあいなくなっちゃえば?」と思ってしまうところがある。そこは今も昔も変わらないかもしれません。考えがぶつかってしまうなら、わざわざ仲良くする必要はないというか、ハードボイルドなところがありますね。だからこそ漕艇部でやっていく中で、もっと多様性を受け入れられるような人になりたいです。これからの展望ですね。

岡 :青木は冷淡じゃないと思いますよ。あくまでもスタンスの違いというか。考えの違う人がいたときに、そこまで降りていって理解しようとする人もいれば、ある程度距離をとって関わる人もいる。「人は人、自分は自分」というのも、一つの生き方だし、それを冷淡と捉える必要はないんじゃないのかな。

青木:「人は人、自分は自分」というのは、言われてみればそうかもしれません。

 

岡 :今年のインカレまでに成し遂げたいことは。

青木:コックスということで言うと、土方さんレベルまではいかないかもしれないけど、唯一無二のコックスになりたいですね。その上でコックス人生を終わりたい(青木はインカレ後、漕手として活動する予定)。「青木涼」というコックスの価値を作り出すというか。「ここが良くて、ここは不出来だったけど、でもこういうコックスだったよ」と言われるようなコックス像を自分で確立したいです。いまだにけっこうふわふわしてるので。

岡 :ちなみに、方向性みたいなのはありますか?

青木:最近は女子艇に乗って、男子艇でわかってたことがわからなくなってきちゃって。体重が軽いからなのかもしれないですけど、感じ取れないことが多い。そこを感じ取れるようにというか、女子に合わせた感覚を持ちたいと思います。それが技術的なところですね。

精神的な面では、クルーの精神的支柱になるというか。漕手はやっぱりきついじゃないですか。でも、きついときでも私がコールをすることで、ついていこうと思ってもらえるようなコックスでありたいです。スパートとか、中盤、相手に負けてる時の足蹴りとか。「ここで足蹴り10本入れれば出られる」って私が判断したときに、「今青木が言うならやろう。ここで勝とう」って信頼してもらえるような、そういう心のコックスに。今このメンバーのコックスになれたらいいのかなって思ってます。

岡 :どうしたらそういうふうになれるのかな? 信頼できるコックスとそうじゃないコックスの差って、何かしらあると思うんですけど、私もうまく言語化ができていなくて。

青木:京大戦の振り返りのときに森田さんから言われたことなんですけど、私が漕手と一緒に陸トレや、同じエルゴのメニューをこなしているというところで、絆みたいなものが生まれたって言ってくれました。応援するだけのコックスだったら、「あんた漕いでないじゃん」って思うけど、青木はそうじゃないって。減量のこともあるし、みんなと全て同じようにできるわけではないけど、できるだけ真摯に選手と同じメニューをやって、同じきつさを共有する。私のやるコックスで一番面白いところ、一番の味はそこかなって思ってます。誰もやってないことだと思うし。そこで信頼感も得られるのかなって期待しています。

岡 :確かに、私の知る限りでも、ここまで漕手と同じようにやってたコックスはいないかも。そこは青木にしか出せない持ち味だよね。個人的には、そこからもう一歩先にいけるといいなって思ってます。漕手と同じメニューをこなすから「どうなるのか」って、そこがたぶん大事だと思っていて。

青木:確かに自分でも、もうちょっと先があるような気がしています。難しい……

岡 :現役時代を思い返すと、自分のプライドを賭けて乗ってくれたコックスのことは本当に信頼していたなって思います。だからこそ勝ちたいという気持ちを感じたし、自分の意志で乗ってくれているなと感じられた。

青木:なんというか、もっと忖度なく意見を言えるようになりたいですね。これを言うと傷ついちゃうかなとか、混乱させちゃうかなとか、そういうことで言うのを遠慮してしまうことがある。最近ようやく言えるようになってきたけど、もっとずばっと言えるようになりたい。

岡 :それは大事かもしれないね。ずばっと言っても崩れないくらいの関係はできてると思う。回りくどく言うと逆にややこしくなるし、ずばっと言った方がお互いのためになるはず。

青木:今の女子フォアは、一人一人漕ぎの癖も違うし、経て来た大会も違うんですよね。そこをうまくまとめあげたいけど、自分がスイープを漕いだことがないので、スイープ特有の部分は正直わからなかったり。そういうわからないところは漕手に一任しがちなので、そこをもっとわかりたいし、言いたいなって思います。あとはやっぱり、負担をかけている漕手には言いづらかったりとか、そういうのもあります。

岡 :忖度と配慮は違うので、配慮した言い方ができればいいんじゃないかな?と思います。

青木:最近いい漕ぎってなんだろう?というのがわかんなくなってきちゃったところもあって。クルーボートって難しいですよね。何がいい漕ぎなのか、どの漕ぎで一番艇速が出るのか、だんだんわからなくなってきて。

あと、いい漕ぎっていうのはある程度定義できるけど、いいコックスって定義しづらいですよね。乗ってるだけと言えば乗ってるだけだから、何を求められるのかって、考えると難しいです。

岡 :コックスは奥深いよね。

青木:結局はそのクルーに合うかどうかなのかな?とも思っています。それは割と確信をもって言えます。

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岡 :どんな大人になりたいですか。

青木:ああ~難しい……んーと、めっちゃ具体的なことを言うと、ずっとカラフルな服を着ていたいです。私、私服がすごくカラフルなんですけど、原色が多くて。こう、ぱきっとした色が好きで、くすみカラーとかベージュとか、あんまり好きじゃない。「おばあさんになったらこういう服」とか、世間的にはあるじゃないですか。でも私は、好きな服を好きなように着させろよって思うので、おしゃれでカラフルなおばあさんになりたいです。「かっこいい!」「あのおばあさんイケてんな!」みたいなおばあさんになりたくて。

岡 :ものすごくイメージがつきました。青空の下で、ぱきっとカラフルな服を来た青木が、サウンドオブミュージックやってそうですね。

青木:「かっこいいおばあさん」が具体的なイメージです。大人って言ったらなんだろうなあ……それこそ面白がって生きてるような人、ですかね。お金がないとか、躓くことはあると思うんですけど、それすらも楽しんで、なんとかなるなる!って思って生きていけば、人生成功なんじゃないかなって思います。

岡 :何ごとも捉え方だよね。なんとかなるって思ってればなんとかなるというか。

青木:今自分にないものを付加するなら、周りの人間に対して愛情深くなりたいです。さっきも話にありましたけど、やっぱり私は、「人は人、自分は自分」マインドがすごく強いなって思ってて。人が思ってることを、気にすることは気にするんですけど、「そうやって考えること自体おかしくない?」って思っちゃったり、見下しちゃうこともあって。そういうときに、見下すのではなくて、リスペクトできるようになりたいです。

岡 :それが「愛情深い」ということですか。

青木:そうですね。

岡 :人を見下すと人間が小さくなってしまうところがありますね。

青木:器が小さいのはかっこよくないので。かっこいいおばあさんではなく、ただのカラフルばあさんになってしまうので。それは嫌なので、颯爽と生きたいですね。

 

岡 :では最後に、読んでくださってる方々にメッセージを。

青木:なんだろう……こんな感じの自由奔放な人間です、ということですかね……すごく奔放な人間だと自分で思います。

岡 :確かにそうかもしれないけど、青木の奔放さは、人に迷惑かけてるわけではないのでいいのでは?

青木:迷惑かけるぎりぎりを常に走ってます。

岡 :青木みたいな奔放さは見ていて気持ちいいですよ。

青木:でも、自分でも「さすがにちょっと……」って思うこともあって。気に入らないことがあるとすぐ「やだ」って思っちゃったり。ボートの漕ぎ方とかではあんまり思わないんですけど、人間関係とか、すぐ逃げ出したくなっちゃうので、そこを頑張って直していきたいです! 今後ともお見知りおきください。

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

青木のうつっている写真はどれを見ても爽やか、かつニクい感じで、全部私のお気に入りです。
ちなみに、インタビュー全編を通して、私に逆質問をしてきたのは青木だけだったのですが、とても嬉しかったです。

いつかカラフルなおばあさんになった青木に、青空の下My Favorite Thingsを歌いあげてほしいと思っています。

 

次回もお楽しみに。

 

 

女子部コーチ

 

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