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【新人チーム】浅野杯、餞の言葉

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今年度新人チーフトレーナーを務めておりました水野太郎です。

 

まず、浅野杯合宿について簡単に振り返ります。

 

浅野杯合宿からは男子部と女子部に分かれ、男子は基本エイト、女子はダブルで浅野杯に向けたクルーづくり行いました。途中入部の男子の清水はまだスカル競技での練習が必要と判断しトレーナーの阪本とダブルで練習を行いました。

季節の変わり目の気温変化と、またまだ自身やクルーとしての体調管理への不徹底で何度か乗艇練習を中止するというもったいない場面もありましたが、各クルー自艇をいかに早くするか議論し、フォーカスを定め、練習を行い、反省をして次につなげるというサイクルをうまく作れるようになっていきました。これに関しては先輩として、またCOXとしてMTGに参加し、適切なアドバイスをしてくれた2年生の谷口・原本・大石の頑張りが大きかったように見えました。またスカル合宿以前までは自分に大きく依っていた新人練習自体の運営も、3人が主体的に動いてくれたこともありトレーナーの下(もと)の新人から現役の中のJrという移行期間もスムーズに進んでいると思います。

またインカレ期間中対校入りしていた原は本人の希望も聞きつつなしペアでスイープ導入を行いました。バウサイの先輩たちオールスターとサシで練習して1週間で大きく成長しました。

 

浅野杯本番についてです。

1レースは新人女子ダブル3杯と、40秒差ハンデをつけて対校女子スカル(李たかみ)、更に20秒差ハンデをつけて新人男子ダブルスカル(清水&阪本)で争いました。

女子ダブルは約2週間と短い練習期間の中、高めのレートで3艇ともよく漕ぎ切りました。優勝した翡翠はおめでとう。たかみと清水もハンデもものともせず女子ダブルに喰らいついたと思います。
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2レースは新人男子エイト2杯で争いました。3週間でスイープを導入し、レートを上げ、更にその高いレートで2000m漕げるようになるというハードスケジュールだったと思いますが、トレーナー陣が提示した数値目標に2艇とも達したことはとても素晴らしいことだと思います。優勝したMarikoはおめでとう。

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エイトのCOXをやりながら浅野杯運営も行った谷口は本当にお疲れ様でした。本試合が新人にとって意義深いイベントになったのは谷口・藤田を中心とする運営にかかわった全員の頑張りのおかげです。

 

今後新人は、男子部は全日本新人選手権(10/25-27)、女子部は東日本新人選手権(10/12-13)にむけて練習していきます。変わらぬご支援よろしくお願いいたします。

 
 さて、浅野杯を区切りにチーフトレーナーは交代し、阪本に引き継いでもらいます。これまでの詳細な振り返り等についてはまた淡青会報にてまとめようと思います。
 とても楽しい半年間を過ごさせていただきました。見えるところ、見えないところで応援くださったOB・保護者の皆様、共に考え行動してくださった新人育成チームの皆様ありがとうございました。
 彼ら新人達をボート部に入れてくれた副島・たかみ・鈴木・堀部を中心とする現役にもとても感謝しています。今後はこれまで以上に優しく厳しく新人と接し、共に成長していってください。

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以下、新人に向けて書かせていただきます。

 

君たちに、新人期はJr・対校期の準備期間であることは何度となく伝えてきました。またその最終目標としての日本一、その目標の上にある理念として「ボートという素晴らしい競技を通じて豊かな人間性を育む」ということも伝えていると思います。この「豊かな人間性」とは何なのでしょうか。

今年、新人期の練習の中では様々なことをClearに説明するように心がけました。また君たちにも状態や結果に対してどう考えているか説明してもらい、アドバイスすることで本人の中でもより理解が深まるよう、そしてJr期以降はトレーナーなしに自身や同期の中でそれができるようになることを目指しました。しかし、この「豊かな人間性」に関しては「社会で活躍しているOBOGがその例である」ということしか示さず具体的な説明はしませんでした。

 

これについては二つ理由があります。一つは人や時代によって考え方が変わるものであるからです。最高学年が中心となってその年の部活の目指すべき目標を決める時、その時社会で要求されている像、そして部員各個人の考え方によって決まるものだといえます(このように時代・人によって変えいくからこそ個性的で時流に合った「豊かな人間性」を持った人材を輩出し続けられるのではないでしょうか)。なので、まだ何も知らない状態の従順な君たちに、こういうものだと押し付けてそこで考えが止まってしまうことを避けたいという思いがありました。もう一つは君たちにとって、まだボート競技や漕艇部について先に知るべきことがあったからです。一部経験者を除いてボート競技自体が初めてで、道具の扱い方や安全管理をはじめに学んでもらいました。そして駒トレや乗艇練習を経ることで、ようやく艇を速くするために、乗艇技術を洗練したり体を鍛えたりすることができる基礎ができたと思います。マネージャーも漕艇部運営の中の基本的な業務を行えるようになったと思います。また漕艇部の合宿所での共同生活の仕方や先輩・同期との関わり方も学んだと思います。ここまできて、ようやく漕艇部のスタート地点です。

 

今までの新人練習・生活ではそこまで先のことを考えなくても問題ありませんでしたが、今後学年が上がっていくにつれてより先のことを見据えていけるようになったほうが楽しいと思います。そこでここでは私がチーフトレーナーとして、今年の新人の4年間のゴールとしての「豊かな人間性」に何を据えたうえで新人期の目標を置き、日々の練習運営を行っていたかについて記します。君たちが新人戦前に考えることなのかというと疑問ですが、いずれこういうことを考えていく、そういうときの批判材料になることを願います。

私は、「豊かな人間性」は二つの要素に分けられると考えています。一つは団体の中で自分・団体の目標を達成できる力を持つことです。もう一つはコントローラブルで制御不能な鋭敏で激しい心を持つことです。

一つ目は理屈っぽい話です。人間各人には多かれ少なかれ、目標があると思います。ここでいう目標とは「将来幸せになりたい」「試合で勝ちたい」「ブッシュドノエルが食べたい」などどのレベルのものでも含むとします。

人間は自分の目標を達成するために行動をしますが、現代社会においてある程度大きい目標を達成するためにはまだ他人の力を借りる必要があります。そこで互いの目標をすり合わせ、全員でその決めた目標に向かって行動することで達成を目指すことができます。これを行うには、まず自分の目標を明確にし、また優先順位をつけることが必要です。複数の人間で目標を定めることを考えると多くを全員で揃えるのはほぼ不可能です。そこで自分がどうしても達成したい目標は何なのかを具体的に知っておかなければなりません。また他人がどういう目標を一番大事にしているかを理解することも重要です。その人がそこに関して無意識的であれば問いかけて共に考える必要があります。そうして全員の目標を理解したうえでその個人それぞれの目標を達成できるような団体の目標を立てて、考え、議論し、行動することで自身の、最も大切な、一人では達成不可能な目標が達成できます。

この目標を達成する方法は将来も使うことだと思いますが、その方法論を学ぶ場として東大漕艇部はとてもいい練習場所だと私は考えています。この団体に属している部員が元々同じような目標をもって入部していると考えられるため、今後所属するであろう団体に比べても目標の統一は容易であろうからです。また目標への執着も一般に比べたら高いレベルにあると思います。そうはいっても各自考えていることは少しずつ異なり、また自分の目標自体も成長に伴い変化していくので厳密に団体の目標を定めることはとても骨の折れる作業になります。ただもしその中で確りと目標を統一できれば強大なパワーを以ってそれへと全員で邁進できると思います。

 

二つ目は理屈っぽくない話です。君たちはこの半年間で様々なものに触れ、そして色々なことを感覚し、また色々な感情が生じたと思います。

4月初めのほうに既に入部を決め先にスタートダッシュを決めたい、大コンパでの先輩の熱い言葉を聞いて入部に駆り立てられた時、エルゴで褒められ「あ、これいけるわ」との謎の自信、初めての参加で練習前に同期と仲良くなれるか感じた不安、検見川合宿で坂道ダッシュがあと3本ある時の絶望、2000m走った後だけどとりあえずチャラで楽しかったサッカー、初めての乗艇で感じたオールを2本持つ難しさ、食べても食べても減らない食事、突如任される計測や記録の難しさ、前回より確実にうまく漕げて感じた成長、辛いけど仲間の声を聞いて頑張るリレー、負けレースを見る悲しさ、整調・バウを任された時のうれしさ、今日のメイン美味しかったな、エルゴ10分前回より記録が伸びて達成感、金夜に艇庫に泊まって過ごすJ部屋、初めてみんなで焼肉おいしい、初めてプロテインを飲んだ時の味、エルゴのフォームが良くなってきたのが自分で分かった時、04Tシャツめっちゃ良い、雷で1日開催になった遠漕物足りなかったもっと漕ぎたい、Dropsetのあとの脚次Evenか、バランスとるの難しいシェル艇、同クラの人に最近大きくなったねと言われ2マス進む、選手が引いてるエルゴを阪本さんに教わって前よりはわかったかな、体調崩して/怪我して練習参加できないもどかしさ、徐々に暑くなって増える水分量、今日のクルーめっちゃ良い当たりやん、トレーナーの乗ったエイトが勝った!やった!、明日はエルゴ500*6か、今夜エルゴ500*6か、1時間後エルゴ500*6か、今日後ろ志真さんからめっちゃ注意されてめっちゃうまくなった、やばい試験勉強しなきゃ、自主トレしに生理学測定室行ったら他の人もいて笑う、いつも自分が迷惑かけてる気がする申し訳ない、シングルスカル楽しい、先輩しかいないご飯づくり緊張、福間さんの声掛け良い怖いけど、今日の乗艇は掴みましたわ、ワークアウトきつかった駒トレ最後か、エルゴ2000終わった!ひとまず花火だ!、毎日早起き辛い、ウェイトまだ余裕だな、ビデオアップロードめちゃ時間かかる、もっとシングル乗りたかった、へだの夜の海、リギング時間かかる、今の艇になってマメの位置変わったな、高レートきつすぎでは、スタ練今日はうまくいった、浅野杯当日学校なんだけど…、勝った!/負けた…etc

 こうして今までに感じた感情で突き動かされたり逆に立ち止まったりしてきたでしょうし、感じた感覚で艇はどんどん速くなっていったことでしょう。今後、より論理的な思考や理性的な行動が必要になっていく中でその感情や感覚といった面もより重視していってほしいです。人間はあくまで自分の本能に従っての行動しかできないと思うので、いかにその本能を自身の目指すところと齟齬が起きないように顕在化・潜在化していくことが重要です。また他者を動かすといった意味でも理屈による説得と同じくらい感情・感覚に訴えかけることが大事になってきます。

 まず様々なものに触れましょう。上記に示したように(またそれ以上に)ボート部だけでも様々な刺激を受けることができます。それ以外にも季節を感じたり、小説や映画を見たり、ゲームをしたり、勉強をしたり、食事をしたり、バイトや大学に行ったり、普段の生活を過ごしたり、その一瞬一瞬を文化的に過ごしてください。

 そして刺激を受けたときに自分がどう感じたのかを(必ずしも言語化はせず)考えてください。そしてその感情・感覚に手放しで従いましょう。喜び、怒り、哀しみ、楽しんでください。その中でここぞというとき、自分のためにどうしても自分を、他者を動かさなければならないとき、感情をうまくコントロールして自分・他者の心に響かせる形で発露できるようになるといいですね。

 

以上の二つを私は「豊かな人間性」の要素として考えてきました。

これからの3年間、この漕艇部で日々がむしゃらに過ごしていくだけで誰でも今後につながるような成長を得られると思います。ただそれだけで満足してほしくない、折角高みを目指すのなら東大漕艇部の部員としての矜持をもって日々自分を、仲間を研鑽していってください。


 

最後に半年間共に過ごしてきた人として、

君たちの、私に会うまでに至った今までに行った全ての選択、そして今後行うであろうすべての選択、それは自分の意志によるものもあり、状況に強いられたものもあり、また何も考えていないものもあるでしょう、中には自身の正義に従うもの、反するもの、社会の正義に従うもの、反するものもあるでしょう、また私の想像の範囲外のものもあるでしょう、そのすべての選択を私は祝福するし、していきたいと思います(責任を負担したり、賛成・反対したりするという意図はありません)。そういう人がいたのだと心の片隅に留めておいて、進歩に向かって果敢に挑戦し、停滞することを受け入れ、後退しても恐れず、脱線を楽しむ君たちらしい人生を歩んでください。

 

 
水野太郎

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