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シーズンを終えて

乾です。
全日本選手権が終わり4年生は引退した。僕もこれでお役御免。1月からチームに関わらせてもらって僕自身いい経験になったけれど、コーチとして選手を導くことは出来なかった。
ここでメッセージを発信できるのも最後なので、今日のエントリーは特に引退した4年生と、選手をここまで応援してきてくださったご家族、OBOGのみなさん、そしてこれからチームを担う新3,4年生に向けて、僕の思いを伝えたい。

注:あえて厳しいことを書くけれど、僕は24年度対校はみんないい奴だと思っていること、選手の周りには「よくがんばったね」とねぎらってくれる人は多くいるが本気で叱ってくれる人はいないと僕が仮定していることをご理解いただいたうえで以下読んでください。

1月に太紀からコーチをやってくれないかと頼まれたとき、僕が考えていたのは「こいつらのハートに火をつけないとまずい」ということだった。実は今の4年生は3年生の時から取り組み、姿勢、認識が甘いとコーチ・スタッフ間で問題になっていて、僕自身、去年の春から初夏の頃だったと記憶しているが、何人かに直接話して今は(当時の)4年生の足を引っ張っちゃってるよね、まずいよね、という話をしていた。そして新人トレーナーとして艇庫に行ったり、コーチから話を聞く限り、その問題は解決していないようだった。
僕には負い目があった。目標達成への執念、そのための取り組みの姿勢、課題とその乗り越え方、チームビルディングのポイントを後輩に伝えるのはお前だ、と4年生の時の横矢学生コーチに指名されておきながら、引退後学生コーチ就任の要請を退けた。
1年遅れだが、引き継ぎをして責任を果たそうと思った。

しかし結果として、最後までチームが覚悟を決めて本気になることはなかった。こんな取り組みじゃあ絶対目標は達成できないよね、と言われて、これはまずいな、と感じはしても、実際に目標を達成できるだけの取り組み・行動に移せる選手は少なかった。僕から見たら、本当に勝ちたいと思ってるなら漕手を辞めてマネージャーになるっていう判断をするべきなんじゃないかな、と思うような選手もいたけれど、そこまで考えているようには見えなかった。僕が来るまでは仲良く楽しくやっていた選手たちは行動と結果を求められるようになってめんどくさかったんじゃないかと思う。メンタリティは良くなっているのではないかという手ごたえを感じたときもあったけれど、選手がデザインしたインカレTシャツを見たとき、それは錯覚だったと気付いた(「東大生は勉強日本一だから、ボートも強かったら最強じゃね?」と背面にプリントしてある。当然東大以外の全てのチームから失笑を買っている。Tシャツのデザインは各自が持ち寄って多数決で決める)。今年度のチームは最後まで自らを謙虚に客観視することができなかった(蛇足だがもし東大生に社会のリーダーとしての役割が求められているとしたら、物事そして自らを客観的に捉える力というのは一番必要な力の一つなんじゃないかと思う)。
直接的な原因で最大のものは僕の力不足だ。振り返ってみてコミュニケーションの方法が稚拙だったり単純に選手と話す量が足りなかったと思う。

しかし率直に言って今年の活動は仲良しごっこに終始しているように見えた。誤解を招く表現かもしれないがあえて一言で言えば、「部活じゃなくてサークル」だ。僕はこれで4年生に「結果はアレだったけどやりきったし、いい友達が出来たからよかった」で終わらせてほしくない。事情を知らないOB/OGに「やっぱりプロコーチは」と言われたくない。4年生に負け犬で終わってほしくない。中途半端な取り組みを癖にしてほしくない。そして今チームに根付いてしまいそうな「言うだけで行動しない/人や環境のせいにする」文化を払しょくするためにも、これからコーチ・トレーナーとなる4年生に変わってほしい。この失敗を二度と繰り返さぬよう、挑戦者の意識を後輩に植えつけてやってほしい。そして、チームが正しい方向に進むためにも、チームを応援してくれている人たちには現場のコーチが見ているチームの姿を知ってほしい。

東大ボート部にいる意味ってなんだろう。
細マッチョになって、合コンでそこそこかわいい彼女を作って、同期と友達になって、OB会のつながりをえることだろうか?
僕の一つの答えは、一生美味い酒が飲める戦友を作ること、だ。
今年のチームにはつまらなそうな顔でいる選手が多かった。ベネットはよく、「ボートを楽しめ」というけれど、目標に向かって本気で一生懸命に取り組み、つらいことを乗り越えていく中でこそ、楽しさが生まれるのだと僕は思う。本当の仲間とは、そのプロセスをともにし、共有し、いつ会ってもその感動とバカ話で美味い酒が飲める戦友だ。目標に向かってチームが一丸となって、各々がその達成のために何をすべきか悩み、実行するなかで、全ての部員にその人にしかできない役割が生まれる。だからこそそのチームメイトを最高にリスペクトできる。少なくとも僕にとって同期はそういう存在だ。自分が少しでもその役割を果たしたと感じていて負い目がなく、相手がいなかったらその活動はできなかったと心から思っていない限り、その人と飲む酒は、一緒に過ごした時間が長いほど、まずい。

僕は4年生にはもっと感動してほしいし、戦友を作ってほしい。中途半端なままで終わってほしくないし、本気になった時どこまで強くなるのかも見たい。だからもう1年、ぜひ漕いでほしい。
そしてこれからの部を担う2,3年生は、目標を達成したいと心底思い、現時点での自分の力不足を認識し、その差を埋めるために自ら何をすべきか考え行動する先輩の姿を見ていない。だからそれを自分たちで作っていかなければならない。これはそれ自体すごい挑戦だと思う。強いチームでは、後輩は先輩の後ろ姿を見て触発されるし、そもそもそういう先輩に勧誘されてシンパシーを感じて入ってくるわけだから、戦士のメンタリティを最初から持っている人も多い(と想像する)。でもいまのうちはそうじゃない。全てを変えるつもりで、来年度に臨んでほしい。

東大ボート部は、教育機関だ。そして日本のリーダー養成のために少なからぬ公金が投入されている。多額の援助をしてくれているOB/OGも、艇庫での経験が自分のためになったと思えばこそ寄付をしてくれているのだと思う。ボートを通じて、情熱、不屈の闘志、忠誠心、人を動かす力、努力する癖、目標達成のために何が必要か考え・調べる力、協調性、体力、仲間へのリスペクト、、、それがこれからの人生に本当に役立つのか実は僕にはわからないが、上に挙げたような色々なものが身につけられる―ただし本気で全力を注げば―というのがこのチームが存在している理由ではないだろうか。
多くのカネとヒトとモノを投入して、中途半端な取り組み、掲げるだけの目標、言いわけ、内向きの視線、狭い視野、、、といったものを若者に植えつける機関はむなしい。

最後に。
偉そうなこと書いたけれど、僕も結果を出せていない人間です。
そんな僕とこのチームを応援してくださった皆さん、応援してないけどブログを読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

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「シーズンを終えて」への6件のフィードバック

  1. 学生コーチ、お疲れ様でした。
    貴方の残した言葉が、来期取り組む学生諸君に伝わり、彼らが本気で取り組んでくれることを願います。

  2. 学生コーチ、お疲れ様でした。
    貴方の残した言葉が、来期取り組む学生諸君に伝わり、彼らが本気で取り組んでくれることを願います。

  3. 学生コーチ、お疲れ様でした。
    貴方の残した言葉が、来期取り組む学生諸君に伝わり、彼らが本気で取り組んでくれることを願います。

  4. シドニー小林

    いいメッセージです。私もボート部は教育の場だという信念を持ってサポートして行きたいと思っています。

  5. シドニー小林

    いいメッセージです。私もボート部は教育の場だという信念を持ってサポートして行きたいと思っています。

  6. シドニー小林

    いいメッセージです。私もボート部は教育の場だという信念を持ってサポートして行きたいと思っています。

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