はじめに
DriveとRecoveryでのボディワークについて中々納得の行く文章が書けない。何故なら、人はそれぞれ体のつくりが異なり、その動きを一意に定義出来ないから(※体のつくりとは、先天的な要因である手足の長さ、後天的な努力で補える柔軟性、両者で決まる可動域などのこと)。見る方も何故そのように動いてしまうのか、体のつくりから意識して考える必要がある。今回は詳細なボディワークについては触れないことにした。
次に
Rowingについてまとめようとしたとき、最初にBladeworkについて書いた。次にRecoveryで重心移動に主眼を置いて書いた。これは僕がcoxというポジション出身だからなのかとふと思った。cox視点のRowing。漕手とは少し違った視点かもしれない。面白いと思ってくれれば尚結構。
キャッチ〜ビギニング〜ミドル〜フィニッシュ
さて、今日はドライブ、細かく言えばキャッチとドライブについて書く。キャッチ動作に入るとき、Gatherを感じながら体はドライブの準備が完全に出来ている。Mike Spracklenの言葉を借りれば”poised like a cat ready to spring”というところ。筋肉は収縮するときにパワーが発揮されるので、体は緩みをなくし筋肉が良く伸ばされていなければいけない。この状態が張り。張りを作ろうとして筋肉を固くしてしまうのはナンセンス。
まずキャッチ。キャッチはentry、placement(、beginning)に分けられる。
東大が主に使っているオールはConcept2社のSmoothie。幅は約25.5cmのもの。インボードとアウトボードの比を考えると必要なentry動作は約11cm。およそこぶし一個分。エイトのパドルの場合、ストローク時間は0.6秒強。entryとplacementはその8分の1、0.08秒で完了する。キャッチは切り返しの瞬間に素早く正確に行わなければいけない。ハンドルをこぶし一個振り上げてフォワードエンドで体が引っ張られる感覚がこの瞬間に存在する。このハンドルの上げ方に関しての言葉は選手の症状にあわせて使い分ける必要がある。「放り投げろ」、「棚の上のカップをつかみに行くように」、逆に「置いてくるように」、「パンチするように」、「ノックするように」。ボートは感性とタイミングのスポーツだ。
その後、速やかにドライブが開始される。この始めの状態が上図にあるbeginning(ビギニング)。ビギニングはLeg Driveによる体重を使ったぶら下がりによって表現される。堀内浩太郎氏(元東北大監督)曰く、ぶら下がりによる仕事量は腕引きによる仕事量より3.1倍も大きい。ドライブの前半で腕が曲がり始めるのは非効率的。
次にミドル。ブレードが力を加える方向と進行方向が平行になり、最も効率良く力が伝えられる場所。臀部を梃子のように使いLeg Driveと上体のスウィングを連動させ、ハンドルに水平且つスムーズにぶら下がり続ける。
最後にフィニッシュ。Leg Drive、上体のスウィングと引き継がれて艇を加速し続けてきた運動エネルギーを腕引きによりハンドルに吸収させる。これにより上体や頭のバックスピードが止まり、運動エネルギーが推進力に転換される。
フィニッシュにおいてブレードが発揮するパワーが艇速を決定する。艇がのびのびと走るクリアな突き放しでブレードが離水した直後に、艇は最も速く動く。ブレードが水を持ち上げたり、引きずったりすると艇は減速する。このクリアな突き放しはレッグオンリーの突き放しと同じだと仙台の阿部監督は仰っていた。
ドライブを三つのフェーズに分けてPush、Draw、Pullと分ける考えもある。それぞれがビギニング、ミドル、フィニッシュに相当すると思われる。

コメント