【女子部61】女子部解体新書vol.10~小栗舞桜マネ・後編~

~前回の続き~

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岡 :それではそろそろ、ボート部編に入って行きましょう。
小栗:わかりました。

岡 :まず、ボート部に入った理由を教えて下さい。

小栗:理由は……そんなにないですね、実は。強いて言うなら、江口さんがずっと連絡を取ってくれていたことがきっかけです。

岡 :運動部に入りたいとかはあったんですか。

小栗:全くなかったです。部活にもサークルにも入る気なくて。でも、江口さんが本当に密に連絡を取り続けてくれて。4月から、入部した10月までずっと、本当に仲良くしてくれました。

岡 :さすが江口ですね。

小栗:江口さんが色々ボート部のイベントに誘ってくださって。オンラインのイベントがあって、聖美さんと話をしたんですけど、zoomなのにすごく迫力がありました。それこそすごく真剣に、zoomのカメラをちゃんと見て、「大学で何がしたいの?」と。そのときに、「あ、私あまり何も考えてないんだな」って気づきました。

岡 :zoomで真剣さが伝わるのって、相当すごいね。

小栗:全然へらへらしてなかったですね。

岡 :さすが聖美さんです。

 

岡 :入部してから今に至るまでの遍歴を教えて下さい。

小栗:10月に漕手として入部して、3月まで新人トレーニングをしていました。浅野杯は11月だか12月にあって、異例の浅野杯でしたね。春休みが終わって本格的に漕ぎ始めて、2年生の5月に、涼ちゃんとダブルで戸田レガッタに出ました。

岡 :たしかに、ダブル漕いでたね。

小栗:でもやっぱり体力的に追いつけなくて、身体はいつもぼろぼろでした。何も考えずに入ったこともあって、「私、なんでこんなことしてるんだろう……」って思うようになって。それまでずっとクラシックバレエやってたんですけど、ボートって全然違うし、そんなふうに迷いながらやってる状態が辛かったです。色んな人に相談しながら戸田レガッタまでは頑張って、終わってからスタッフに転向しました。転向するときには、聖美さんと原本さんに話を聞いてもらって。それから2年生の間は、本当に好きなことだけやらせてもらってました。

岡 :たとえば何をやりましたか。

小栗:ちょうど06が入った時期にスタッフになったので、駒トレに毎日行きました。まだ漕手をやめたばかりだったので身体も動いたし、一緒にライクニーナしたりとか。運動自体嫌いではないので、駒トレを見るのは楽しかったし、06のスカイツリーの遠漕も一緒に漕ぎました。

岡 :たしかにその時期、日焼け対策ばっちりで漕ぎに行く小栗を見かけた気がする。

小栗:あとは、誰かにやれって言われたわけではないんですけど、ボート部のインスタグラムのアカウントが1年ずっと動いてない状態だったので、動かし始めたり。夏休みは写真をいっぱい撮って、毎日投稿してました。あとモーターの免許取りに行ったりとか……本当に自由気ままにやらせてもらってましたね。

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岡 :新歓を始めたのはいつ頃ですか。

小栗:2年生の秋頃からやってました。これは本当に大変でしたね。自分も人としてそこまで成熟してなくて、その状態でやったのがまずかったんですよね。OBの種田さんにもめちゃくちゃ迷惑かけてしまいました。

岡 :迷惑というのは?

小栗:新歓mtgで「こういうのやった方がいいんじゃないか?」という提案はたくさんいただくんですけど、そういうのに対して、私がいちいち突っかかっちゃって。新歓が何たるものか、3年生のときは本当にわかってなくて。そのときは、そもそも新歓とは、新入生に「入ってもらうもの」と思っていました。それも正解といえば正解なんですけど、でもそう思っていると、新人勧誘の運営側って、何も動けなくなるんですよ。そこをわかってなかったから、何をするにもしっくりこないまま動いてたりとか。種田さんの提案にも、「やった方がいいんだろうけど、なんか動きたくないな」と思っちゃって。あとは、さっきの話にもあったんですけど、人間関係のところですね。新歓「チーム」として動けなくて、作業を1人でやって勝手に疲れたり。空回りというか、頑張らなくていいところで頑張ったりして。自分が納得して動けていなかった結果、周りもめちゃくちゃにしてしまったり。

岡 :新入生に「入ってもらう」ものじゃなかったら、新歓って何なんですか。

小栗:「君に入ってほしい」ということですね。

岡 :おお、なるほど。

小栗:新入生側の気持ちは大事だけど、こちらの気持ちも伝えなければいけない。完全に「入ってもらう」という姿勢でいると、こちらの気持ちを伝えることは、アクションとしてしないんですよ。部員の中にも「入ってもらう」ものだって思ってる人は多いと思うんですけど、そういう人にもアクションをいかに起こしてもらうか、というのを新歓チームは考えないといけないわけです。

岡 :種田さんってどんな人ですか。

小栗:すごく心が広い人です。私は本当に迷惑をかけてしまって……絶対気を悪くするようなこともばんばん言ってたのに、最後まで一緒に新歓やってくれて。OBにとって、ボート部に関わることは、全然義務ではないじゃないですか。途中で投げ出してもいいくらいのものなのに、絶対投げ出さないでやってくれたし、その次の年も関わってくださって。私の内定先の人を紹介してくれたりもして……私は恩知らずというか、あんなに迷惑をかけたのに、こんなに良くしてくれるなんて。ひたすら心が広い方ですね。

岡 :新歓の意味が腑に落ちたのはいつ頃ですか。

小栗:いつなんだろう……新歓とは直接関係ないところなんですけど、最高学年になってから、山路監督と話す機会が増えたんですよ。山路監督の考え方ってすごくわかりやすくて。今、自分が何をすべきか?というのが、山路監督と話してるとはっきりしてくるんですよ。一つ課題が出てきたときに、それに対するアプローチを自分で考えられるようになりました。それまでは、「こういう問題があります、だからうまくいきません」というふうに、問題を見つけるところで止まっていて。でも、山路監督にとってはそこがスタートなんですよね。「じゃあ、そこからどうするの?」と問いかけてきてくださって、「あ、ここから考えるのね」とわかりました。私は今までそういう考え方をしてこなかったので、大きな変化でした。新歓でも、「人を入れたい、だけど難しい」で止まるんじゃなくて、「じゃあどうするの?」ということですよね。

岡 :山路さんすごい。

小栗:山路監督っていつでも前向きなんですよ。そこが好きです。何か問題が起きても、山路監督がいるmtgだと、ずっと暗い気持ちでいるってことがなくて。切り替えが早いというか、「問題は解決するもの、解決できるもの」と捉えているからだと思います。

岡 :それは強い。

小栗:仕事柄なのかわからないけど、山路さんにとって、課題が永遠に課題であり続けることはないんですよね。うまくいかない理由とかも、課題解決の材料にしてしまう。

岡 :たしかに仕事柄ってあるかも。頭の働かせ方の違いというか。私は仕事柄、センシティブに感覚が働くからボート部でもセンシティブにいくけど、違う仕事をしてたら、ここでのやり方も違ったかも。

小栗: 1回目の新歓が、自分の中で本当に嫌な思い出になっちゃって。入って来てくれた07はいい子たちばかりなので、それはよかったんですけどね。だから最高代で、もう一回新歓を頑張るチャンスがもらえて本当に良かったです。新歓の意味も腑に落ちていた状態でやったから、楽しかったし、06スタッフの子たちもがつがつやってくれたので、チーム感も強かったなと。充実していたし、いい思い出です。

岡 :新歓での反省点は他にありますか。

小栗:やっぱり、人との向き合い方ですね。新歓メンバーに対しても部員に対しても。やっぱり信頼してなかったので、「どうせ頼んでもやってくれないだろう」と勝手に思って仕事を頼まない、というのが本当にあって。当時、自分の中では「信頼してないから頼めない」とは思ってなかったんですよね。遠慮と言うか、「この人は○○で大変そうだから、頼んだら負担になるかな」と、頼まないことを勝手に正当化しちゃってたというか。

岡 :それを1年後に取り戻せたのはすごく大きな転換ですね。

小栗:そんな機会をいただいて本当にありがとうございます、という気持ちです。

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岡 :新歓以外で取り組んだことはありますか。

小栗:最高学年に上がって、会計になりました。でも会計の仕事って、レシート貼り付けたりエクセルに入力したり、そういうのがメインなので、あんまり楽しいことないなと……

岡 :クリエイティブではないんだね。

小栗:クリエイティブにしようと思えばできるんでしょうけどね。

岡 :主務と会計は、どうやって決めたんですか。

小栗:私たちの学年は、中山、吉田、小栗とスタッフが3人いるんですけど、役職つくなら恒常的に艇庫にいられる人がいいよね、と話し合って。中山は学科の都合で艇庫に来られないときもあったので、私と吉田で主務と会計を分けることになりました。私も吉田君も強い意志はなかったけど、私は吉田君に主務をやってもらいたかったので、今の体制になりました。

岡 :どうして吉田に主務を頼みたかったんですか。

小栗:私、吉田君の判断の仕方にすごく信頼をおいてるんですよ。私は決め打ちというか、適当に考えちゃうことがあって。「もうこれでいいんじゃん?」みたいな。でも、吉田はそれが全くなくて、どんなに小さいことでもちゃんと考えるんですよ。主務はそういう人の方が、チームにとっていいだろうと。本当に、めんどくさいくらい考えるんですよ彼は。

岡 :それは知らなかった。

小栗:吉田君とは最高代になってから、2人でしゃべる時間がすごく長くて。信頼関係を頑張って作ってきた感はあります。すごく苦い思い出でもあるんですけど、2回目の新歓のとき、3月か4月くらいだったかな、仲たがいをしかけたことがあって。

岡 :仲たがい?

小栗:そもそも私と吉田は、性格も仕事のやり方も全然違って。私はスピード重視というか、やればやるだけいいし、早ければ早いだけいい、というタイプなんですけど、吉田は慎重型。今年の新歓イベントの会場のキャンセルだったかな、吉田が担当だったのに、ついつい「急がなきゃ」と思って、私がアクション起こしちゃったことがあって。そしたら、吉田がそれに対して、ものすごく怒ったんですよ。

岡 :へえ。

小栗:本当にものすごく怒られて。「これは俺の仕事でしょ? なんでそんなことするの?」と。私としては、「いや、吉田が遅かったから私がやったんだけど?」と思ってて。でも、吉田はとにかくすごく怒ってて。私も彼がなんでそんなめんどくさく怒ってるのかわからないし、彼も、私がなんでそうしたかをわかってないし、すごくやばい状態になりました。どっちかが部を去るんじゃないか?くらいの険悪さ。その後、吉田が「一回話し合おうか」って言ってきて、それが本当にすごく怖くて。刺されるんじゃないか?というくらいの目線で言われました。

岡 :それは怖い。

小栗:そしてその話し合いのときに言われたのが、まさに前編の話なんですけど、「小栗は僕を信頼してないよね」って。

岡 :吉田が怒ってたのはそこだったのか。

小栗:そう、そこだったんですよ。たしかに「吉田はやらないだろう」と思って動いちゃったところがあって、吉田はそれにすごく傷ついたんだって、気づきました。たしかに私も同じことされたら尊厳が傷つくのに、ああ私、そんなことしちゃったんだ……って思って。それから、私も思っていたことは言って、状況をお互いに理解しました。そのうえで、これからも2人でやっていかないといけないから、もう一度信頼しあってやっていこう、ということで再スタートしました。

岡 :そんなことがあったとは。

小栗:それからはお互いに、言いたいこと言い合える関係になりました。たまにケンカもするんですけど、それも安心してケンカできるというか。

岡 :すごくいい関係じゃないですか。

小栗:でも、そのときはすごいショックでした。私自身も、人に期待されないこととか、「この人にはできないだろう」って判断されちゃうのがすごくいやだったのに、それを他人に対して平気でやってたんだって……それがショックでした。

岡 :でも、そこで吉田が怒れてよかった。信頼されてないことに対して、スルーしてもよかったとは思うけど、逃さずにちゃんと怒ってくれた。

小栗:本当にそうなんですよ。そういう姿勢が、吉田は随所に見られます。一見めんどくさいんですけど、でも絶対にその方がいいんですよね。

岡 :吉田の知らなかった一面を知れました。

小栗:私もスタッフになって初めて、「あ、こういう人なんだ」って理解しました。ちゃんと関わらないと見えない部分が多い人だなって思います。

岡 :他人にちゃんと期待して、裏切られたら怒れる、そういう人っていいよね。

小栗:自分に対する尊敬と言うか、自尊心をちゃんと持ってるんだと思います。

岡 :たしかに、大切な自分を裏切られたら怒って当然か。

小栗:吉田のいいところをもう一つ言うと、新歓の時期に、中山君が海外に行くってなったことがあって。12週間、旅行に行くという話だったんですけど、「なんでこのタイミングで?」と、新歓チームには波紋を呼びまして。それならいっそ、中山には新歓に関わってもらわない方が、本人にとっても新歓チームにとっても良いんじゃないか、という話になって。「全力コミットしない人が出るとけじめがつかないから」という論理で、中山君に期待しない、コミットを求めない、という流れになりつつあって、私もその考えだったんですけど、吉田ただ一人はそうじゃなくて。

岡 :おお。

小栗:吉田はそこにすごくこだわりを持っていて。海外にいたとしてもやれることはあるからやってもらおう、と。海外だから時差もあるのに、時間をあわせて電話したり、しっかり中山とコミュニケーション取りながら、仕事を振ってたりして。吉田のそういうところ、本当に尊敬します。中山を巻き込む方が圧倒的にめんどくさかったはずなのに、最後までちゃんとやって。脱帽です、本当に。

岡 :熱い男だね。

小栗:結果的にも、それで良かったと思うんですよ。中山君も、自分がどれくらいコミットするかは新歓チームに任せますって言ってたけど、吉田君に仕事を振ってもらって嬉しかったんじゃないかな。今も中山はできる限り艇庫に来ようとしてくれるし、吉田がやってくれたことは偉大だったなって思います。

岡 :他に何かエピソードありますか。

小栗:私、中山君も好きですよ。中山君は、私や青木とタイプが似てます。

岡 :どういうところが?

小栗:些細なことは笑い飛ばそうみたいな。「そんなことはどうでもいいじゃん」というタイプですね。中山君も吉田君も、自分を大事にしてる人だと思います。

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岡 :ボート部をやっていて、嬉しかった瞬間を教えて下さい。

小栗:思い出といったらやっぱり、吉田と仲たがいをしてのエピソードですね。吉田がちゃんと「話し合いをしよう」って言ってくれたことが嬉しかったです。あとは、そうですね……振り返ってみると、ボート部大好きとか、全部がいいとは思ってないんですけど。でも確実によかったなって思うのは、同期でも先輩でも、これからの人生でも仲良くしたいなって思う人が、何人もできたこと。それだけでボート部に入って大正解でした。

岡 :それは良かったですね。

小栗:嬉しかった「瞬間」というのは、あんまりないですね。スタッフしてると、もちろん試合に勝ったら、嬉しいは嬉しいけど、爆発的な喜びではない。「勝ったな……」みたいな。後から思い出してしみじみ、「あのとき嬉しかったなあ」みたいなのが多いですね。

岡 :たしかに、嬉しいことって、振り返ってみてはじめて気づくことが多い気がする。

小栗:そうかもです。

岡 :繋がっていきたい人がいっぱいできたのって、それだけ小栗が人と一生懸命関わってきたからこそだと思う。

小栗:いや、自分が頑張ってないときでも、助けてくれた人がいるんですよ。新歓期とか、スタッフに転向するときとか、悩んでた時、助けてくれた人が必ずいて。自分は何もしてないのに……本当に素晴らしいなって思います。なんでそんなことをしてくれたのかわからないです、本当に。

岡 :もしかしたらその人達も、自分自身がボート部で助けてもらってきたからかもしれないね。

 

岡 :ボート部やってて、しんどかったときを教えて下さい。

小栗: 3年生の新歓期ですね。4年生になってからは基本的にハッピーではあるんですけど、たまにしんどいのは、「期待されてないな」って感じる時です。

岡 :そんなことあるんですか?

小栗:前、ブログにモチベーション云々の話を書いたんですけど、たぶんそういうことが言いたくて。「マネージャーはモチベーションないよね、じゃあ上げなきゃね」と思われていることは、すごく悲しいし、傷つきますよね。あと、「モチベーションないよね」と直接的には言われなくても、言葉のはしばしからそういうの感じることがあって、いやだなって。

岡 :たしかに、それはいやだ。

小栗:あと、たとえ誤解だとしても、「現役だからこう思ってるんだろう」「ここまでは考えられてないだろう」と思われてしまうのもいやですね。自分はもっと広い視点で部を見ているのにって。これも「期待されてないな」って感じてしまうからかな。自分期待されたがりすぎなのかもしれないですけど。

岡 :期待されたがりの方がいいよ。「私に期待しなくていいですよ」というのは一種の逃げだと思う。

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岡 :チームにおける自分の役割を教えて下さい。

小栗:スタッフの中では、「最高学年だから、とりあえず元気でいよう」と思ってます。だから、艇庫にいるときは比較的元気ですね。あんまり落ち込んだり悩んだりしないかな。必要のないところで悩まないようにしていて。スタッフって作業に追われていると、どんどん暗くなっていくんですよ。すると最悪な気持ちになることがあるので、そうならないよう、マネ部屋の雰囲気を明るくすることに努めてます。

岡 :どうやって明るくするんですか。

小栗:おもしろいことは言えないので、このまま素でいることですね。人にもけっこう話しかけるし、あとは一人で歌ったりとか。

岡 :それはとてもいいですね。

小栗:その結果、先輩っぽさはなくなってますね。ただの元気な人みたいな。

岡 :すごく大事だと思います。先輩が暗くなると、後輩も暗くならざるをえないから。

 

岡 :ボート部に入って、自分が変わったなって思うところは。

小栗:今まで話してきた通りなんですけど、人を信頼しようと思うようになった、人に期待するようになった、というところです。あとはその結果、外向的になりました。休みの日とか、一人でいるのも好きなんですけど、友達と一緒にいる、というオプションが増えたような気がします。

岡 :それは自分として嬉しい変化ですか。

小栗:嬉しいですね。これを続けていったら、一人ぼっちにはならなないかなって思うので、いいかなって。

 

岡 :ボート部に入っても、ここは変わらないなって思うところはありますか。

小栗:というか、最近は、変わらないようにしようとしています。スタッフという役割に自分をあてはめるんじゃなくて、ありのままの自分でいること。「ボート部にいるから」とか「マネージャーだから」というのはやめにして、素の自分をここでいかに出せるか?というのはいつも考えていて。その結果、言いたいことは言うようにしてます。

岡 :小栗は、本当に色んな面があるね。シャイだけど、言いたいことは言いますっていうのもおもしろい。

小栗:シャイなんですけど、「自分がこうしたい」というのは昔からあります。シャイな部分が少しずつなくなってきた分、今は、気が強い方なのかな。人の意見に流されて言いたいこと言えないという人もいますけど、そんなことは全くないです。

岡 :強いねえ。

小栗:もうちょっと先輩っぽくした方がいいのかなって思ったこともあるんですけど、それは無理だなって諦めました。自分が「最高学年だから」「マネージャーだから」というふうには、極力思わないようにしています。

岡 :自然体であることの強さってあるよね。自分に無理な力がかかってない分、一番勘が冴えた状態でいられると思う。

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岡 :ボート競技の魅力を教えて下さい。

小栗:水上スポーツであることが魅力だと思います。なぜかわからないですけど、海とか川とか舟とか、そういうものに魅かれるので。舟のチームを「クルー」というのも、すごくかっこいいなって。「クルーキャプテン」とかもいいですよね。

岡 :海賊的な。

小栗:あと、ボート部員の筋肉の付き方は一番いいなって思ってます。アメフトとかラグビーはひたすらでかいけど、それよりもしゅっととして、均整のとれた感じが好きですね。陸上の中距離とか、そのへんの筋肉も好きです。

岡 :どちらかというと細マッチョ派ですかね。

小栗:そうですね。

 

岡 :マネージャーというポジションの魅力を教えてください。

小栗:んー、これは……私もわからないです。マネージャーとして誇りを持ってやっているけれど、もう一回大学生活を送るとしたら、マネージャーにはならないだろうな、とも思っていて。

岡 :なるほど。

小栗:私もずっと考えてます。マネージャーって何なんだろう、何が楽しいんだろうって。実は新歓で悩んだ時に、粉川さんに相談したことがあるんですよ。マネージャーってどうしても、他の人のためにやってる時間が長くなるし、そのことにどう折り合いをつけて活動していけばいいのかなって。そのとき、粉川さんは「解決策になるかはわからないけど、他の人のために動けるってことは、すごく素敵なことだと思うよ」と言ってくれて。それはそうかもな、と思いました。私はベクトルがつねに自分を向いているので、自分のための時間を大事にしがちなんですけど、そこであえて「他の人のための時間」を選択してるのも、すごいことじゃないかなって。

岡 :たしかに。

小栗:あと、他人のためだと思ってやっていた時間も、実は自分のためだったな、ということはよくあります。だからマネージャーの魅力は……なんだろう。私みたいに、マネージャーやろうなんて思ってなかった人間からしたら、自分にとって新しい視点ができた、ということですかね。

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岡 :あのブログ(令和5年度東京大学運動会漕艇部 : 「マネージャーのモチベ」問題? – livedoor Blog(ブログ)の話も詳しく聞きたいなと思っていました。書こうと思ったきっかけなどあったら、教えてください。

小栗:あの内容は、ずっと自分の中であたためてきたことでした。文章化しようと思ったタイミングがあのときで。自分が部活やってて、窮屈だなと思う瞬間はいつも、「マネージャーが期待されていないこと」に対する不安があるなって。

岡 :小栗の問題意識ですね。

小栗:それが一番いやなので、もうやめてほしいなって思って書きました。自分が思ってるだけだったらブログにしなくてもいいか、とも思ったんですけど、やっぱり発信した方がいいなって。というのは、「マネージャー期待されてないな」とこちらが感じるような行動をしてる人って、全く悪気はないんですよ。無意識にしてしまっている節がある。そういう空気や文化があるなら、あえてここで言った方がいいんだろうなって。

岡 :そうだね。発信してくれてよかった。

小栗:私も吉田に対してしていたように、全く意図してないことで相手が傷つくことって、あると思うんです。それこそ、ご飯作りのマネージャーなんか、もっとあからさまに嫌な思いをしているような気がして。他大マネージャーは「艇庫に来る回数が少ないから」とか、「選手が練習する姿をあんまり見てないから」とか、そういうのを前置きで言われたりするじゃないですか。それがすごくいやで。「だから何?」みたいな。活動内容が違うのは、それは事実じゃないですか。それなのに、それをわざわざ選手の活動に寄せて考える必要はないって思っていて。だって選手が練習している分、マネージャーはごはん作ってる時間があるわけで。それは、同じくらい尊重してほしいと思います。マネージャーは、すごく長い時間をかけてごはん作ったりしてるのに、それにプラスして「選手の練習の内容を理解してほしい」とか、「選手と同じ熱量でやってるのか」とか、そういうことを、そもそも問われる必要があるのか?と思います。

岡 :逆に、選手がマネージャーご飯作りのことを理解してるのか?っていったら、してないよね。

小栗:それからマネージャーにも、マネージャーというポジションに甘んじてほしくないと思っていて。外から言われる「マネージャーはこうだよね」という像に自分をあてはめてほしくない。ちょっと悲観的かもしれないけど、そこに自分をあてはめにいっちゃうと、言われたことだけをやるマネージャーになってしまう。「これやってください」「はい、やります」みたいな……それはいやだなって。でも、またこれも難しくて。「マネージャーはできる限り選手の要望に応えるべき」という言説もあって、それもそれで一つの正解というか、マネージャーとして目指す姿だと言う人もいる。でも私はそうは思わないので。

岡 :マネージャーに意見や要望があるなら普通に言えばいいと思うけど、「こうしたいんだけど、どうかな?」という相談が大事だよね。一方的に意見だけ言っても意味がない。そこを選手側もわかっていてほしいなと思います。

小栗:最高学年になりたてのころは、それこそ、何か要望があったら最大限応えるのが正義と思ってやってたんですけど。でも、それやってもつまらなかったし、だんだん自尊心が削れてくるので苦しくて。

岡 :苦しいならやめた方がいいね。

小栗:ここまでの話を考えると、もしかしたら、そもそも私にはマネージャーが向いてない、という結論になるのかもしれない。じゃあ、なんで今マネージャーをやってるのか、なんでやめないのか、っていったら、先輩のマネージャーがすごくかっこよかったからなんですよね。原本さんと谷口さんが、本当にかっこよかった。

岡 :うん。

小栗:私は最高学年になっても、その2人みたいに、かっこいいマネージャー像を提示しきれてないな、追いついてないな、という気持ちはすごくあって。だからこそ、後輩のマネージャーには、もっと元気に、ぶいぶいやってほしいです。

岡 :マネージャー=選手の要望を受注する人、みたいにはならないでほしいですね。

小栗:そうなるとやりにくいですよね。

岡 :どうしたら変えられると思いますか。

小栗:今だったら、まず私自身が、思ったことはどんどん言っていくこと、これは絶対必要かなと。自分が一番臆病にならない、諦めないこと。マネージャーの存在感を出していくことが大事だと思っていて。私と吉田が強化計画mtgに出てる意味も、そこにあるんですよね……あっ、私いつもこういう感じなので、ボート部にいて、常に戦ってるような感じです。

岡 :戦いの人生ですね。他大マネージャーという存在についてどう思いますか。

小栗:便宜上というか、どうしても動き方が東大マネと違うところがあるので、名前を分けておいた方がわかりやすい、というのはあると思います。でも基本的には、同じ「マネージャー」という括りでいたいです。

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岡 :東大ボート部の魅力を教えて下さい。

小栗:私にとっての魅力はいっぱいあるんですけどね。部員にもOBにもいい人がいた、という点で。でも、一般的に考えるとどうだろう。他の運動部と比べたら、やっぱり活動形態は特殊ですよね。合宿生活は、いいなって思います。部員にとってはこれが普通になってるし、むしろ家に帰りたいというもいますけど、これはあんまりできない経験なんじゃないかな。

岡 :こういう形の共同生活って、今時なかなかないよね。

小栗:共同生活するのとしないのとでは、会話の量にけっこう差が出ると思うんですよ。私は大学生になっても人と毎日しゃべってて、幸せだなって思います。「おはよう」とか「おやすみ」とか、普通に言ってるけど、不思議だしおもしろい。もしボート部に入ってなかったら、私一人で起きて一人で寝るんだ……と思うと。上京してきた一人暮らしの人には、特にいいかもしれないですね。

 

岡 :もう一回大学生活をやり直すとしたら、どうしますか。マネージャーはやらないってさっき言ってたけど。

小栗:クラシックバレエを再開していたような気がします。実は今までも、何回か再開しようとしてるんですよ。1か月続いたときもあったんですけど、やっぱり難しくてやめちゃいました。部活やってなかったら、バレエやってたと思います。ボート部やりながらでもチャレンジしたってことは、よっぽどバレエが好きなんだなって思うので。もちろん、引退したらやるつもりです。

岡 :それはいいですね。せっかくなので、バレエの魅力について語ってください。

小栗:まず、バレエを見に行くと非日常感を味わえます。あと、ボートと一番違うなと思ったのは、バレエって苦しいところを絶対に見せないんですよ。トウシューズってずっと履いてるとけっこう痛くて、バレリーナの足って本当に汚いんですよ。マメだらけだったり傷だらけだったり、血も出るし。そういうのを一切感じさせずに踊ってる。演技中は観客にお尻を向けてはいけないとか、そういうルールもあったりして。「苦しいところを見せない」というあり方が美しいなと思います。

岡 :そうなんだ。

小栗:それは普段の練習からも意識するので、先生にも「苦しい顔しない!」って言われたりします。ボートはある意味「苦しい者勝ち」みたいなところあるから、それはギャップと言うか、慣れないなって思ってました。

 

岡 :引退までに成し遂げたいことは。

小栗:引退まで元気に明るくあり続けて、私がいなくなったときに、「小栗さん引退してからマネ部屋が静かになっちゃった」って言われるようにしたいです。それくらいの存在感を放っていきたいですね。

岡 :今のままいけばきっとそうなるね。

 
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岡 :私に質問あったらお願いします。

小栗:えっ、どうしよう……じゃあ、岡さんから見て、私ってどういう人だと思いますか。

岡 :おお、難しい。

小栗:色の話もそうなんですけど、「私はこういう人です」みたいに、自分のことをうまく一言で言えない状態なんですよ。だから、人から見てどうか?というのを聞きたくて。

岡 :そんなに小栗と話す機会があるわけじゃないので、一言で言い表せるほど、小栗のことをつかめてない、というのが正直なところです。でもなんだろう……(長考)……部のシステムとかマネージャーのあり方とか、大きいことをちゃんと考えてるけど、小栗が一番大事にしたいのはもっと小さいところなんじゃないかな、という印象があります。

小栗:なるほど。ちっちゃいことを大事にしたいから、まずは大きな方に話を持っていく、というのはあるかもしれないです。

岡 :名前のついた一人ひとりを大事にしているような気がする。小さな人間関係や、そこで生まれる小さな幸せを重んじそうなイメージです。あとは、大胆さと繊細さを持ち合わせてるのは青木と似てるなって思います。戦うべきときに戦えるファイトもある……うーん、でも自分でも、なかなかしっくりくる言葉が見つからない。

小栗:私もボート部でかなり変わったというか、身につけたものがたくさんある気がします。ボート部に入る前だったら、もっと簡単に「私はこういう人」って言えたかもしれないんですけど。ボート部を経て、それが難しくなってしまいました。

岡 :自尊心というか、自分を大事にする気持ちは持ってそうだよね。

小栗:でも、「こういう人」って言われない方がいいかもしれませんね。言われたら、意識しすぎちゃうかもしれない。東洋哲学なんですけど、自分のパーソナリティを規定すると可能性が閉ざされてしまう、という考え方があって。

岡 :それはそうかも。あと、パーソナリティの話ではないけど、小栗は私のケーキを喜んでくれる人ですね。

小栗:岡さんの作るケーキはずっしりしていて密度がありますよね。ふわふわのスポンジケーキよりそっちの方が好きなので嬉しいです。

岡 :その褒め言葉すごく嬉しい。

小栗:そういえば、お母さんにはずっと、「ママが何言っても聞かないよね」って言われます。

岡 :いいことだね。小栗は、「おかしい」と感じたことをそのままにしないよね。そこが小栗のセンシティブさだと思うし、周りも納得できるよう、行動に移していけるのがタフさなのかな。(岡追記:自分の回答にいまいち納得できなかったので、後から考えて小栗を描写してみました。「ロマンチストではあるけど、日々他人に対する努力を怠らない。その意味ではとても現実的。明日になればまたちがう一日が始まる、そのことを、きっとよくわかっている。捨てられない何かを大事に、毅然と持ち続けている。人生に意味を求め続けることを、決して忘れない。」)

岡 :何か言い残したことはありますか。

小栗:そうですね……やっぱり、マネージャーがどういうものかとか、やりがいとか、そういう問いに、明確な答えはぱっと出ないなって思います。今回聞かれて、こんなに答えられないものなんだって……頭では常に考えてるんですけどね。でも、インタビューという機会があってよかったです。

岡 :答えが出ないことが本質なのかもしれないね。ドラマ『Dr.コトー診療所』の中で、「なんで自分たちは医者なのか、それを考え続けることを、放棄してはいけない」というセリフがあって。「これ」という答えを安直に出さずに、答えを探し続ける人だけが真の医者たり得る、という話でした。マネージャーもそれと似ていて、「マネージャーはこういうもの」と答えを出すんじゃなくて、答えを探し続ける人が真のマネージャーたり得る、そういうポジションなのかな。答えが出ないとすっきりしないけど、その方が真実に近いのかも。

 

岡 :同期の青木さんへメッセージをお願いします。

小栗:ええっ、そうですね……漕手に転向してから、苦しそうにしている時期もあって、そのとき私は正直何もできなかったんだけど、でも今、すごく輝いてるなって思います。

岡 :本当にきらきらだよね。

小栗:いやもう、本当にきらきらで。私は嬉しいです。涼ちゃんが元気でいてくれたら、私も嬉しいですね。

岡 :2人が「涼ちゃん」「舞桜ちゃん」って呼び合うのが個人的にはツボです。呼び捨てじゃなくて、ちゃんと「ちゃん」付けなんだよね。とても可愛らしいと思います。

 

岡 :これを読んでくれている人にメッセージをお願いします。

小栗:読んでくれているということは、私のことが好きとか興味があるとか、そういう人だと思うので。是非これからも仲良くしてほしいと思います。

岡 :長い時間、ありがとうございました。

小栗:ありがとうございました!

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いかがでしたでしょうか。

「人を信じる」というテーマが一貫していて、私自身、とても考えさせられるインタビューでした。

青木が友情出演してくれましたが、2人のかけあいがとてもいきいきしていました。小栗と青木が支えあって、長い道のりをここまで頑張ってこれたこと、本当によかったなと思います。

インカレまで戦い続ける小栗の姿に、これからもご期待ください。

それでは次回もお楽しみに。

女子部監督

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