とうとう最後のブログを書く日がやってきました。
文章を書くのが割と好きな自分にとって、ブログ執筆の順番が回ってくるのは密かな楽しみだったので、少し寂しいです。
05年度女子部主将の青木涼です。
同期の小栗に何を書いたら良いか相談したところ、今までを振り返るみたいなのはダサいと言われたので、入部して割とすぐからずっと気になっていたことを書きたいと思います。
それは、
スイープとスカルどっちが先に生まれたんだ論。
ローイングを習得するにあたっては、スカル種目を先に学び始めます。我が東大漕艇部でも、初めて一年生が練習するのは、スカル種目のクォドルプルです。高校生が出るインターハイも確か全部スカル種目だったはず。
ローイング動作的にも、スイープよりスカルの方が回旋動作などが入らないため、シンプルで「基礎」という感じがします。
ではスカル種目が先に生まれて、そこからスイープ種目に進化していったのでしょうか。
しかし、世界史を一度は学んだことのある皆さん。思い出してほしいのです。
かの古代ギリシアで紀元前5世紀頃から地中海での海戦で使われていた三段櫂船という船を。
三段櫂船とは、その名の通り、船が三段になっており、各段に漕手が何十人と並べられて、人力で船を進めるという現代の戦艦のようなものです(下図参照)。サラミスの海戦などで活躍したと言われており、当時有力なポリスの一つであったアテネの三段櫂船はなんと最高時速18kmは出たとか。
この三段櫂船。一人につき一本のオールを持ちます。
すなわち、スイープなのです。
このように、船の内部構造は三階建てで、各サイドに人が並んでいます。
余談ですが、古代ギリシアのポリスでは(厳密に言うとスパルタ型とかアテネ型とか色々あるのですが)、ポリス同士の争いの際は市民が自費で武具を買って武装すると言うスタイルでした。重装歩兵とか有名ですね。
しかし、自分で武具を買えない市民たち(テテネスというらしいです)は武装が出来ないので、そういう人たちが優先的に三段櫂船の漕手として活躍しました。アテネでは、ペルシア戦争での市民の大活躍により市民たちの発言権が強まり、民主政が最盛期を迎えたと言われています。
つまり、ローイングによって、古代ギリシアの民主政が完成したと言っても、過言ではないということですね(過言です)。
もっと歴史を遡りましょう。
古代エジプトのファラオ、アメンホテプ2世はボート選手として活躍したという文献が紀元前1430年の文献として残っているそうです。
ということで、古代エジプトのボートはどんな感じだったのかというと、こう↓

(トヨタ紡織Rowing TeamのHPより引用)
後ろにオールのようなものがありますね。
さらに、これ↓

(水中考古学と7つの海より引用)
これは、2000年前の墓から発見されたボートのモデルだそうです。
>>>>一人につき一本のオールを持っている!!!<<<<
まあこれはスイープというよりカヌーっぽい船の動きをしそうですが。
と、いうことで、このブログを書くために費やした2時間程度の調査によると、どうもスカルよりもスイープの方が先に生まれたっぽいぞ、ということがわかりました。
一見複雑な方が単純な方よりも先に生まれたという話は、日本語の漢字とカタカナ、ひらがなの成り立ちの順番に似ていますね。
これを調べていて、一つ興味深い事実を発見しました。
数多くのボート部員を苦しめている地上最恐のトレーニング機器、エルゴ(ergo meter)ですが、それとよく似たergonという言葉が古代ギリシア語にあるそうです。
意味は、労働。古代ギリシア市民の三大義務は、教育、納税、エルゴだったのでしょうか。
古代ギリシアの市民やエジプトのファラオが、日頃からエルゴをぶん回していたりしたのかな、と思うとちょっと面白いですね。
エルゴを引くファラオの図 細かくこだわって描きました。
では、こちらの言葉でお別れです。3年間、大変お世話になりました。
Cogito ergo ergo merda. 我思う。故にエルゴはクソである。



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