初めまして、新人の西村です。丸メガネをかけているせいでいつの間にか「文豪」というキャラをつけられてしまい、今回ブログを書くにあたりやたらハードルを上げられているのですが、平凡な一理系学生にそのような文才はありません。今回は無難に松戸遠漕のことについて書いて逃げさせていただこうと思います。
往路組なので朝の6時台に出発です。前日は二部屋に30人弱が泊まるという理想的とは言えない環境だったこともあり十分な睡眠がとれなかったのですが、この一大イベントに興奮している僕にそんなことは関係ありません!やる気十分!という調子でスタートしたところで早速出鼻をくじかれました。船のリギングが夜だったこともあってか気づかなかったのですが、リガーにヒビが入ってたようで、実際に漕ぐとバウサイの方がハイトが低くなってしまっていたのです。そのためまだ三分の一も終わってない段階で相当疲れました。主に精神的に。普段の乗艇での距離を漕いでようやく一つ目の休憩地点、虹の広場です。虹の広場では、一面に広がる草地のもと、ジョギングや日光浴を楽しむ人々がおり、周りを見渡せば三方を高架に囲われた昂ぶる風景があり、そして極め付けは遠くにそびえ立つスカイツリー!…そこは言うなれば「楽園」でした。「秋ヶ瀬は楽園」とはなんだったのか…というツッコミは心の中に留めておきましょう。みんなで楽しく捕食を取り休憩しました。しばらく休み、続いては山場の20kmの区間です。壊れたリガーも取り替えていただき、気を取り直して出発!この区間では早々にして、今までずっと意識していた漕ぎの感覚を掴み、一気に漕ぎやすくなりました。クルー全体としても、ゆっくり大きく前に出るフォワード、ぶら下がりからのレッグドライブをフォーカスとして、全員で声を出しながら徐々にリズムもあってきました。途中再び現れたスカイツリーに興奮したり、巨大な鉄の板が浮いているだけのようなタンカーとすれ違ったりと、遠漕ならではの楽しみもありました。しかし後半になってくるとそんな余裕もなくなってきます。新中川ではひたすら長い直線で並べをしたのですが、感覚としては永遠に続くようで、何回もフォームやリズムが崩れては立て直しパドるということの繰り返しでした。二回目の休憩地点に着く頃には数時間前までのやる気にあふれた姿はどこにもなく、ただ「一刻も早く船を降りたい!」以外の感情がなかったです。その休憩地点のポニーステーションは、その名前の割にポニーは一頭もおらず、いるのはひたすら大量の貝を水道で洗うおばさま方だけしたね。謎。そんなことを思ってたら昼休憩の一時間はあっという間に過ぎ、とうとう最後の12kmです。この区間は乗艇直後から体が疲れに支配されているようでライトワークでさえしんどかったです。ましてや並べは…。それでも自分の眼の前で必死に漕いでる同期や全力で勝ちに行こうとする先輩の姿を見て、最後で負けるわけにはいかない!と自分を奮い立たせ、何度も限界を感じながら漕ぎ続けました。残念ながら最後は三分の一艇身差を詰められず負けてしまいましたが、この並べは過去最高に自分を追い込んだ状態での並べだったと感じています。松戸に着いた時にはもうボロボロで同期に心配されるほどでした。
ここまで長々と遠漕の様子を書き連ねてきましたが、僕がこの練習を終えて得た一番の気づきは、たくさん漕ぐことの大切さです。このブログのタイトル、「一番の近道は遠回りだった。(遠回りこそが俺の最短の道だった。)」は僕の好きな漫画である「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物ジャイロの言葉なのですが、この言葉が今回の遠漕を表していると思います。普段の乗艇練習は週に一回と限られた時間でいかに上達するかということを考えながら漕ぎますが、その上で今回のように長い距離を漕ぎ続けることで、今までとは違った次元の発見がたくさんありました。日曜の夕飯の席でOBの方もおっしゃっていた、 “Mileage makes champions.” 限られた時間の中で最大効率の下練習するのは当然大切だが、どのチームもそうしている中で勝つためには距離を漕がなければならない。このことを胸に刻んでこれからの駒トレや乗艇練習に励んでいきたいと思います。
最後になりますが、僕たち新人のために松戸遠漕の準備をしてくださったコーチやスタッフの先輩方、一緒に乗艇して頂いたOBの先輩方、お会いする機会は少ないですが支えてくださっているマスターズの先輩方、本当にありがとうございました。これからの練習でも、この恵まれた環境に感謝しながら、自分のできる最大限の努力をして最速で成長していきたいと思います。