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後の自分に誇れる4年間を-野崎大地(1985年入学、東大教授・東大漕艇部長)

東大漕艇部での活動は、卒業後にどんな糧となって活きているのか、様々な分野で活躍されているOBOGの方々にインタビューしました!今回紹介するのは、東大教授(教育学研究科身体教育学コース)であり、東大漕艇部長の野崎大地先輩です!現役時代は、漕手として全日本大学選手権優勝やユニバーシアード出場(いずれも対校エイト)を初めとする数々の輝かしい実績を残されました。現在はそのご経験を活かし、東大で身体教育科学やボートの動作解析を含むスポーツ科学研究に取り組まれ、権威ある日本学術振興会賞等を受賞(2007)するなど研究の世界でもご活躍されています!

(これは2021年3月に書かれた記事です。)

自己紹介

漕艇部部長の野崎大地です。新入生のみなさん、東京大学合格本当におめでとうございます。新型コロナウイルスによる先が見通せない不安と制約の中、目標を達成するためにしっかりと努力を続けてきた皆さんに心から敬意を表します。きっと大きな期待に胸を膨らませていることと思います。東京大学は、そうした皆さんの期待に応えてくれるだけの多様なリソースを持った場所です。この機会を十分に活用していただきたいと思います。
 私は、1985年に徳島県にある脇町高等学校から理科I類に入学しました。進学したのは工学部社会基盤工学科ですが、大学院から教育学研究科に移り、現在も教育学研究科で教授を務めています。専門は身体教育科学で、人間の身体運動を脳・神経系が制御・学習する仕組みについて、VRやロボティクス技術、先進的な動作解析手法、計算論、脳機能イメージングなどの方法を使って調べています。また、数年前に東大の中にスポーツ先端科学連携研究機構が立ち上がったことをきっかけに、スポーツ科学研究にも取り組むようになりました。

東大漕艇部に入部された経緯や入部動機についてお聞かせください。

高校生のときに東大漕艇部が特集されたテレビ番組を視ました。「青春東大ボート部」みたいなタイトルだったのではないかと思います(定かではありません)。科学的なトレーニング法を取り入れ、東大の運動部の中では例外的に日本一を目指せる部であること、古い伝統を誇り多くの優れた人材を社会に輩出している名門であることなどを知りました。また、ゴルゴ13という漫画で東大漕艇部OBが主役のエピソードがあるのですが、こんなところでも取り上げられるなんて凄いと感心しました。運動することは得意で好きだったのですが、高校時代は真剣には運動していなかったこともあり、東大では漕艇部に入りボートを漕いでみたいという気持ちが次第に高まってきました。不遜に聞こえるかもしれませんが、合格・入学する前から入部を決心していたといっても良いかもしれません。

東大漕艇部での4年間を振り返られて、最も印象に残ったことや感動されたことは何ですか?

全日本大学選手権での優勝、全日本選手権でゴール寸前までトップを守っていたものの最後失速し2位になった悔しさ、ザグレブで行われたユニバーシアードなど、もちろんレースに関しては多くの思い出があります。しかし、最も強く印象に残っているのは1年生の冬の合宿生活のことです。当時、東大は一橋大学との定期戦(東商戦)に2連敗していました。3連敗を喫したことは漕艇部史上ないことで、もう絶対に負けられないという状況でした。東商戦必勝のために先輩達が自らに課した練習は量も凄まじいものでしたが、それに取り組む態度も鬼気迫るものでした。その時のことを考えると、今だに身が引き締まる思いがします。このレベルで物事に取り組むことのできる人間が世の中にいるのだ、おそらくボートに限らずどの分野でもそうなのだろう、自分もまずはボートで全力を尽くすことで強さを身につけようと決意できたきっかけとなりました。

大学3年時の全日本大学選手権決勝で、対校エイトクルーが見事に優勝した瞬間。奥の艇、右から3番目が野崎部長。
大学4年のとき、全日本選手権(エイト)で準優勝でゴールした後、コーチ・エイトクルーで撮影。
「ゴール直前に失速し僅かの差で優勝を逃した悔しさが今でも鮮明に記憶に残っている」後列真ん中が野崎部長。

大学3年のとき、ザグレブで実施されたユニバーシアードに東大対校エイトが日本代表として出場。手前の艇、右から2番目が野崎部長。
現在は東大の身体教育学の教授として、また東大漕艇部長として、ボートや漕艇部の活動に 深く携わられています。野崎部長にとって、ボートというスポーツはどのような存在ですか?

ボート競技、中でも特に花形のエイト種目は素晴らしい競技だと思います。8人のオールの動きが完全に同期し、17mにも及ぶ細長いボートが水上を滑っていく姿は美しいとしかいいようがありません。しかし、その美しさの背後には、あらゆる競技の中で最も過酷と言ってよいほどの選手一人一人のハードワークが潜んでいます。ボートの動きをマクロで捉えたときの美しさと、各選手の動きをミクロで捉えたときの力強さのコントラストが魅力だと感じます。

 そして、個人レベルとクルー(集団)レベルの双方での向上が極めて大事だという競技特性は社会の構造の縮図でもあります。全員で挑戦することが個人の限界を打ち破ることに繋がると同時に、時には個々人の頑張りが集団の行動に正の影響を与えることもあるでしょう。私自身、漕艇部での活動中自分の弱さを実感することも多々ありましたが、志の高い環境に身をおくことによって限界に挑戦し突破する強さが自分に次第に備わってきていることを実感しました。このときに得た自信や矜持が、その後も自分を支え続けてくれていると感じています。漕艇部のOB・OGは皆そうだと確信しています。漕艇部に入部を薦める理由でもあります。

今年、世界でも有数の設備を誇るボートの動作解析実験室が本格的に始動(東大本郷キャンパス)。最先端の動作解析技術を用いた科学的アプローチで、世界のボート界の発展を後押しされています。
野崎部長にとって、東大漕艇部にはどのような魅力がありますか?

私が東大に入学してから36年もの時間が経過し、その間に社会の状況や仕組み、学生の気質や考え方も随分と変わってきたことは否定できません。しかし、それでも、漕艇部に入部してくる学生の中に以前と変わらない普遍的な特性を感じることがあります。日本一を目指すというような高い目標に惹かれ、それに挑戦することに価値を感じる気質なのかなと思います。高い志をもつ部員が集まり一つの目標を達成するために相互作用することで、個々人では到達しえない体力・精神力を知らず識らずのうちに身につけることができる、東大漕艇部はそういう優れたダイナミクスを持っていると思います。

最後に、新入生へのメッセージをお願いします。

 大学時代にしか経験できないものに真剣に取り組むことを皆さんにお薦めしたいと思います。将来の進路からあえて外れたものを選ぶと、自分に今までなかったような能力が鍛えられたり、新しい自分の能力を発見できたり、ということがあるかもしれません。私自身のことを振り返ると、高校生のときの決意どおり漕艇部に入部し、後の人生において「大学時代ボートを漕いでいました」と言えることは幸せだったなとつくづく感じています

 もちろん皆さんの選択が漕艇部入部であればそれに勝る喜びはありません。ボート競技は科学的アプローチが極めて有効だと考えており、世界でも有数の設備を誇るボート漕ぎ運動の解析実験室を作りました。また漕艇部の艇庫も日本一といって良い設備を誇っています東大漕艇部が誇る施設・設備を武器に一緒に日本一を目指しましょう!皆さんの入部を心から待っています。

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