今回ご紹介するのは、東京大学及びケンブリッジ大学チャーチル・カレッジのそれぞれの漕艇部にて漕手として活躍され、現在は在英日本大使館の二等書記官として働かれている松前秀昭先輩です!

将来、外交官の仕事や海外(イギリス)留学に関心がある方は、下記もご覧ください!

外務省「世界の職員から」(2019年3月)

https://www.facebook.com/Mofa.student/posts/2379002652344963

自己紹介

新入生の皆さん初めまして、2010年文科一類入学(駒場東邦卒・51回生)の松前秀昭と申します。まずはこのコロナ禍で何もかもが異例だった中、合格を勝ち取って入学されたこと、おめでとうございます。

私は入学して漕艇部に入った後、2013年10月に引退するまで漕手として活動し、その後1年間学生コーチを務めました。2015年に外務省に入省し、2年間の東京での勤務の後に外務省の在外研修員(外交官補)として渡英しました。University College London(UCL)とケンブリッジ大学の各大学院で1年ずつ学び、2019年6月からは在英日本大使館で二等書記官として働いています。

東大漕艇部に入部された経緯や入部動機についてお聞かせください。

小学生時代サッカーに打ち込んでいましたが、中高と一度スポーツからは離れていました。しかし大学で何か皆スタートラインが同じ新しいスポーツをしてみたいと思っており、前期試験で東大に合格した後色々調べる中で漕艇部が一つの候補になっていました。

実際に入学して先輩たちの勧誘を受けたとき、正直当時は部が掲げる「日本一」という目標を自身のものとして理解したわけではないですが、先輩たちの説明を聞く中で、決してただの大言壮語で言っているのではない、自分も挑戦できるかもしれない、という直感的な印象を感じたのだと思います。試乗会で何よりボート競技そのものに惹かれ、自然と漕艇部の、そして同期となる同じ新入生の輪に入っていました。

松前さんにとって、東大漕艇部やボートの魅力を教えてください。

今でも試乗会で初めてボートに乗ったときの爽快な気持ちはよく覚えています。今思い返せば全く速いとは言えないスピードではあったと思うのですが、よく晴れた日の水と風を切る感覚に強く惹かれました

ボート競技はとてもシンプルですがそれと同時にとても奥が深いです。漕ぎの一つ一つ、動きの細部まで、全てが艇速に反映されますが、だからこそ全てが噛み合ったときの喜びと感動はひとしおです。自分たちにとってでき得る最高の漕ぎを目指して、それをレース本番のたった数分間で出すために日々仲間と取り組むことは、現役の学生だった当時も喜怒哀楽色々ありましたが今振り返ってもとても貴重で、東大漕艇部はこれに取り組む場として、人もモノも、環境的にとても優れているのではないかと思います。

東大漕艇部の4年間で、最も印象に残ったこと・感動されたことをお聞かせください。

まず印象に残っているのは、新入生だった頃の食事会で当時の監督がおっしゃった「人を感動させる大人になるためには自分が感動したことがなければいけない」という言葉です。この言葉だけは今も強烈に覚えています。

その後漕手として過ごした3年半の間、楽しいことも辛いこともありましたが、最も感動したのは最終学年で臨んだ全日本大学選手権です。準決勝で負けて5-8位決定戦に回ったものの、最終レースに臨むエイトクルーには不思議な落ち着きと静かな闘志があり、レースでは序盤からクルーが文字通り一心同体、コックスの指示にも全員が完璧にコミットし、準決勝で大差をつけられて敗れていた中央大学に最後詰められながらも振り切って勝ち切り、5位となることができました。今までの人生で、感動して心からの涙が止まらなかったのはあのレースの後だけです

2か月後に行われた現役最後のレース、全日本選手権には、エイトクルーの一部でフォアを組んで出場、優勝できる自信を持って臨みましたが、悔しくも3位となりました。それでも嬉しい銅メダルを獲得し、今でも大切な記念となっています。

こうした大きな大会での銅メダルを悔しいと思えるまでに自分をさせてくれた漕艇部と同期を始め先輩・後輩たちには、本当に感謝しています

「人生で一番感動した瞬間」:全日本大学選手権の順位決定戦で見事に1着(全体5位)でゴールしたときの写真。奥の艇、左から4番目が松前さん。
全日本選手権の舵手付きフォア銅メダル獲得時の表彰台にて。中央が松前さん
イギリス留学中にボートを漕がれたご経験を通じて、印象に残ったことや東大漕艇部との違いを教えてください。

私はケンブリッジ大学の大学院に渡英2年目で合格し、環境・エネルギー政策の修士コースで学びましたが、その1年間、自身のカレッジ(ハリーポッターのグリフィンドールのような、授業以外の学生生活を共にする寮とお考え下さい。ケンブリッジ等の一部の古い大学に今も残る制度です。)であるチャーチル・カレッジのボート部に所属しました。いきなり入学してきた漕げるアジア人に向こうも驚いたでしょうが、日々の練習とクルー選考を経て、年度後半に春と夏の2回行われたカレッジ対校レースにおいては、カレッジのトップクルーとして出場することができました。Head of the River Raceという3月末にテムズ川で行われる英国内最大のレースにも出場しました。

日本より圧倒的にボート競技が浸透している英国の裾野の広さと伝統を感じるとともに、水の上の感覚に取りつかれ楽しくボートを漕ぐ気持ちには、日本も英国も変わりないなと感じました。

一方で東大漕艇部の設備・環境のすばらしさも強く感じました。所属カレッジのボート部は言うに及ばず、各カレッジの選りすぐりが集められたケンブリッジ大学の全学のボート部(東大の淡青の元になった色をブレードカラーとするのはこちらの全学ボート部です)でも、東大漕艇部ほどの設備と環境には及ばないと感じました。

ケンブリッジ市内を流れるケム川で行われるカレッジ対校戦にて、所属カレッジのトップクルーで力漕する松前さん(手前の艇、前から4番目)
東大漕艇部でのご経験が、社会人になられてどのように活かされていますか?

それを語れるようになるにはまだまだ働いた期間が短いように思いますが、主に二つほど挙げたいと思います。

一つ目は、目的を達成するための過程の組み立て方を自然と理解しているということです。外務省で働いていますと、日々の小さな案件から大きなところではG7やG20のような国際会議、2019年10月に行われた即位の礼への世界中の元首級賓客の受入れまで、様々な達成しなければいけない目的を持ちます。どのような仕事にも共通と思いますが、その達成のためには、何をすべきかを正確に計画し、そのうち何は絶対に妥協できないものかを判断する必要があります。その過程はまさにレースで最高の艇速を出すという漕艇部での目的への過程と同じであり、ただ目の前のことのみ又は目的のみを打算的に見ていては実現できないことです。

二つ目は、ある意味ボート競技がマイナースポーツである故でしょうか、経験者と分かると年齢関係なく打ち解けてしまうということです。今私は英国にある日本大使館で働いていますが、お会いする日系企業の幹部の方々、コロナ禍の最前線にいらっしゃる医学・医療関係の方々の中に、東大漕艇部及び他大漕艇部出身者が複数人いらっしゃいます。ボートを学生時代一生懸命漕いだ、そんな心のつながりが自然に芽生えるのでしょうね。

最後に、新入生へのメッセージをお願いします。

大変な受験を乗り越えて大学生活に期待と不安を持っているものと思います。大いに悩み、色々な選択肢を持って新人勧誘の場に行く中で、あなたにとって心から惹かれるものに出会えることを祈っています。その中で漕艇部は私が自信を持っておすすめすることができる場所です。消極的な自由に逃げるよりは、積極的な自由を活用して、何かに挑戦し、卒業するときに自分が成長したな!と思える学生生活にしてください。