今回ご紹介するのは、元々は運動が得意ではなかったものの試乗会でボートの魅力に触れ、全日本選手権や国体などで輝かしい戦績を残された、伊藤琢磨先輩です!卒業後も選手として活動を続けられ、引退後は母校の沼津東高校ボート部でコーチとして活動されました。現在はタイ(バンコク)に駐在されています。

自己紹介

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。2009年大学院入学の伊藤 琢磨(いとう たくま)と申します。2010年まで、東大漕艇部で漕手として活動しました。電力会社に勤務しており、現在はバンコクにある現地法人へ赴任しています。バンコクへ赴任する前までは、母校の沼津東高校ボート部のコーチをしていました。

東大漕艇部に入部された経緯や入部動機についてお聞かせください。

ボート競技は沼津東高校ボート部ではじめたのですが、コーチが東大漕艇部OBであったことから、東大漕艇部は自然と意識する存在でした。大学は明治へと進みましたが、大学院は折角なら恩師の母校で漕ぎたいと思い、東大へ進学し、東大漕艇部へ入部しました。

 明治にいたときから東大の選手らとは仲が良く、私大強豪校から見ても東大は環境や人材が揃っている魅力的な部に思えました。また部の雰囲気も良く、入部後も直ぐに馴染むことが出来ました。特に、一緒に選手時代を過ごしていない同期相当の世代、つまり私が明治大学4年生の時の東大4年生のメンバーとも仲良く過ごせたことも、とても嬉しかったです。

伊藤さんにとって、高校ボート部と比較した、大学ボート部や東大漕艇部の魅力を教えてください。

大学ボート部の魅力は、競技についてより深く知ることが出来ること、心技体共に格段に向上すること、一生の仲間と出会えることではないでしょうか。高校ボートと比較し、ボート競技に接する時間は格段に増えて生活の中心となると言っても過言ではありませんが、そんな中で大学ボートの魅力を多くの人に感じてもらいたいですね。

そして東大漕艇部の魅力は、何と言っても「全員が日本一という目標に向かう熱いハートを持っている」ことだと思います。素人集団ながらも尋常じゃないほどの勢いで練習を頑張り、どんどん成長していく。私自身も「これは負けてはいられない」と感じ、自ずと今まで以上に練習を頑張り、選手として成長することができました。

 また学年や世代を超えた仲の良さも、東大漕艇部ならでは魅力だと思います。現役の時は同じ学生からだけでなく、年配のOBの方々にも力強いご声援を頂きました。更に、資金面でも十分な支援を得ており、不自由なく練習できました。

大学院2年生のとき、全日本選手権にシングルスカルで出場し、見事に決勝に進出。チームの声援を背に、スタートに向かう伊藤さん
東大漕艇部での選手としての2年間、また沼津東高校ボート部のコーチとして携わられたご経験のなかで、最も印象に残ったことや感動されたことをお聞かせください。

 選手としては大学院2年生の時に、全日本級の大会で多くのメダルを獲得できたことは思い出深いですね。特に全日本選手権の予選では、五輪選手を押さえ全体トップタイムを出すことができました。結果として決勝では五輪選手らに敗れ銅メダルとなりましたが、翌年の国体優勝への試金石となりました。

 全日本選手権や国体で結果を残せた時は単純に嬉しかったのですが、それ以上に「やっと努力が報われ、お世話になった人に良い報告が出来る」という気持ちも強かったです。ボートの練習はご存じの通り辛い部分も多いので、挫折しそうな時期もありましたが、それを乗り越えられ、ほっとしました。

 目標としていた日本代表や五輪には手が届きませんでした。悔しい部分は多いですが、長期的な戦略が少し不足していたかなと感じています。今振り返っても過去は変えられないので、この部分については自分の今後の将来や、東大漕艇部のために活かせればと考えています。

 沼津東高校ボート部のコーチとしての印象に残ったことは、やはり選手の成長です。最初は本当に体つきも細く、技術的にも難点のある選手が、練習を重ねるうちに想像以上に強くなり、強豪校にも勝ち全国大会へ出場を決める。「練習は不可能を可能にする」を強く感じた瞬間でもあり、教え子の成長は私にとって何より大きい喜びでした。

全日本選手権のシングルスカル決勝のスタート直後。オリンピック選手らと共に、日本一を争う。写真は伊藤さん
全日本選手権(シングルスカル)の表彰式で記念撮影(左が伊藤さん)。「挫折しそうな時期もありましたが、それを乗り越えられほっとしました。やっと努力が報われて、お世話になった人に良い報告ができます」(伊藤さん)
高校以降から社会人までのボートのご経験が、社会人になってどのように活かされていますか?

「全力で取り組む」「最後までやり抜く」ということは当然ですが、「人と向き合ってしっかりと話をする」「実際に自分の目で見て、自分自身で考えて試してみる」という心がけは、今でも活かされていると思います。

ボート競技はただ頑張るだけではなく、自分の頭で考えながら試行錯誤を繰り返さなければ勝てません。また日本人の性格なのか現代の社会の傾向なのか分かりませんが、人としっかり向き合わないと相手が本当に考えていることを感じることが出来ないと思います。これらは正に社会人として必要とされていることだと思いますし、私はそういうことをボートで学びました。

 情報が溢れる現在では、多くのことがオンラインで完結してしまうことが多いですが、人とFace to Faceのコミュニケーション、自分の五感を使って確かめ考えること、これらに勝るものは無いでしょう。

最後に、新入生へのメッセージをお願いします。

スポーツとか水の上とかは自分には縁が無いと思っている方でも、先ずは実際にボートを漕いでみてはどうでしょうか。特に細かいことは言いません。実際に漕いでみれば、その魅力に触れることができると思います。

実は私、運動は元々得意ではなく、高校では美術部に入る予定でしたが、試乗会でボート競技の魅力に心を奪われ、今日に至るまでボートに関わり続けてきました。人生とは思いもよらない方向に転ぶものだなと、今更ながら感じております。

新入生の皆さんが、ボート競技と出会うことを、バンコクから祈念しております。