今回ご紹介するのは、現役時代にボート未経験ながら人一倍の努力を重ね、COX(舵手)として見事に全日本選手権優勝を成し遂げて東大総長賞を受賞された、酒井真利先輩です!

自己紹介

酒井真利と申します。新入生のみなさん、合格おめでとうございます。今年はコロナ禍で思うように受験勉強を進めることも難しく、一層の努力をされたことと思います。本当におつかれさまでした。 私は2005年に愛知県立刈谷高校を卒業後、理科一類に入学しました。大学ではボート部に入部し、2008年の最高学年では対校エイトの舵手(COX)をしておりました。現在は地元の愛知に戻り、環境保全や省エネルギーに関する仕事をしています。

東大漕艇部に入部された経緯や入部動機についてお聞かせください。

高校時代に陸上で長距離をやっていたため、脚力や持久力などの自分の持ち味が活かせるスポーツをしたいと考えていました。はじめは他の部活やサークルも考えていましたが、新歓のイベントで話をしてくれたボート部の先輩の人柄がとてもよかったことから、ボート部に興味を持つようになりました。受験で身体がなまっていたため練習について行けるか不安がありましたが、当時私たちを見てくださっていたトレーナーの方々が無理なく続けられるトレーニングを用意してくれていたおかげで、授業後のリフレッシュとして楽しく練習に参加することができました。練習に参加するにつれ顔なじみの仲間も増え、次第に日本一を目指すことに魅力を感じている先輩方や同期の仲間に惹かれるようになり、入部を決意しました。

酒井さんにとって、COXとしてチームをリードすることのやりがいや魅力を教えてください。

スポーツをしたいと思い入部した私ですが、徐々に漕手ではなくCOXとしてメンバーをサポートする方が、よりチームに貢献できるのではないかと思い、1年生の秋よりCOXを志願しました。COXは舵手という名前の通り、舵を取って艇をまっすぐ進めることが仕事ですが、実際のCOXの役割は多岐にわたります。練習では漕手の動きや艇の動きをみて指示を行うコーチとなります。普段は漕手のトレーニング管理や艇整備などを行うサポーターとなります。さらに大会では他のクルーの状況を見て駆け引きを行い、コールにより漕手のチカラを引き出すブレーンとなります。特にコーチとしての役割は重要で、はじめは経験の浅い私が指示やコーチングを行うこと(時に2学年上の上級生に向かって)に戸惑いや不安を感じました。ですが、悩んだときは先輩COXやコーチの方々から丁寧に教えていただき、また日々の練習で漕手一人ひとりから積極的にフィードバックをもらうことで、漕手の動きの違いから生まれる艇の機微な変化を感じられるようになり、徐々に手ごたえを感じられるアドバイスや指示をできるようになりました。艇上での密なコミュニケーションとコールにより、私とクルーのイメージが統一され、結果艇速が著しく向上したときなどは、代えがたいやりがいを感じることができました

大学4年時の東商戦(一橋大学との対校戦)の対校エイトで3連覇を達成したときの写真。
須藤ヘッドコーチ(後列の1番右)・内藤主務(前列の1番左)・対校エイトクルーで撮影。前列の右から2番目で優勝杯を持っているのが酒井さん
東大漕艇部での4年間を振り返って、最も印象に残ったこと・感動されたことは何ですか?

大学3年生の時全日本選手権で付きペアという種目で同期と後輩で挑み、優勝することができました。本学11年ぶりの全日本選手権優勝ということを評価され大学から総長賞をいただくことができ、また個人としては入部時に抱いた日本一という夢を達成したことを、当時大変嬉しく思いました。ただこの経験は、個人の目標を達成するよりチームの目標を達成する方が何倍も価値がある(喜びを全員で分かち合うことができる)ということに気づくきっかけにもなりました。そのため、最高学年の時に全日本大学選手権エイト優勝というチームの目標が5位という結果で終わってしまったことは強い心残りがあり、最も印象強く残っています。漕力の高い仲間たちを勝たすことができなかったのは私の責任だと思い、当時の取り組みを深く反省しました。

大学3年時に全日本選手権の付ペアで見事に優勝したときの表彰式の写真。中央が酒井さん。同期の施(右)、2年生の小栗(左)と共に「日本一」を達成し、東京大学より総長賞を受賞した。
ボート部での経験や、COXとしてチームをリードされたご経験が、社会人になってどのように活かされていますか?

企業における研究開発の仕事は、どれも社会の様々な課題を世の中にない技術で解決するという、極めて難しいものです。一人で解決できることはほとんどありません。多様な専門性をもつ方とコミュニケーションをとりながら、失敗してもあきらめず粘り強く取り組むことが必要です。私にとっては、あの3年生の時に全日本で優勝したときのうれしさや最終学年で勝てなかった悔しい想いが、今も困難に直面したときにあきらめずやり切るための原動力として働いています。

また現在私は、明るく、より活気のある職場をつくるための活動を有志と共に進めています。職場の環境や家庭の事情は人によって大きく異なるため、多くの方の声を広く拾い集めることがこの活動では重要なのですが、これもクルーのため試行錯誤し、コーチ兼サポーターとしてメンバーと話し合った、COXとしての経験が活かされていると感じています。 何より私がボート部で4年間頑張ってよかったと感じていることは、当時の仲間たちや先輩後輩たちが大学、ベンチャー/大手企業、官公庁などの各方面で活躍し、その刺激をもらえることです。彼ら彼女らの頑張る姿が、私にもっと頑張ろうと働きかけてくれます。最近同期がリモート飲み会を開いてくれたのですが、10名以上を超えるメンバーで集まる大きな会となりました。卒業して13年経っているのですが、今も集まって楽しく話ができる仲間に出会えたことに、ボート部を選んで本当によかったと感じています。

同期とのリモート飲み会での一コマ。懐かしい思い出話や、近況報告に花が咲いた。卒業から13年経っても、同期との強い絆を感じられるのは、東大ボート部の醍醐味のひとつ。
最後に、新入生へのメッセージをお願いします。

社会に出ると凄い経歴の持ち主や魅力のあるキャラクターを持つ人で溢れています。大学の4年間で「自分はこれを頑張った」と胸を張って言えるものを見つけてください。それが、きっと将来自分の糧になると思います。その対象として、ぜひシンプルでありながらも奥の深いボート競技、そして志の高い一生モノの仲間が得られる東大ボート部を選択してもらえると幸いです。