今回ご紹介するのは、中高は文化部出身ながら女子部主将として全日本選手権6位、インカレ8位に輝き、現在は大学教員としてご活躍されている粉川美踏先輩です!

自己紹介

新入生の皆さま、入学おめでとうございます。2007年度卒業の粉川美踏と申します。皆さまにとっては、不安や期待を抱いての入学になったかと思います。私は現在、大学の教員側の立場にいますが、私たちも今の状況を乗り切るための知恵を振り絞っています。頑張っていきましょう。

 私は、2004年に茗溪学園高校を卒業して理科1類に入学し、2006年から2007年にかけて女子部主将を2年間つとめました。4年生の時に全日本選手権にダブル(2人で漕ぐ艇)で出場して6位入賞、インカレはクォード(4人で漕ぐ艇)で出場して8位でした。引退後も数年間学生コーチとして戸田に通いました。

 勉学の方では農学部で食品工学の研究室に入り、研究が面白くて博士課程まで進学しました。2015年からは筑波大学で助教として働いており、5歳と2歳の娘がいます。

東大漕艇部に入部された経緯や入部動機についてお聞かせください。

 両親ともに大学は運動部に所属していたので、大学は運動部に入るものだと勘違いしていました(笑)でも球技は絶望的に苦手で、中高は美術部だったので、スポーツ未経験者でも始められそうなスポーツを探していたところ、漕艇部の先輩に声をかけられました。「バイトもやって旅行にも行って、という大学生活も否定しないけど、一つのことを貫き通すのもいいと思わないか」と言われて、その場で入部を決めました。

 元々、人生における選択はあまり迷わず、直感的に決める性格ですが、漕艇部のとても尊敬している先輩に「何を選択するかが重要ではなく、選択が正しかったと思えるように精一杯努力することが大切」と言われたことが、今でも支えになっています。

レース中の一枚。クルーが一体となって艇を加速させることから、ボートは「究極のチームスポーツ」とも呼ばれる。大学から始める人が多く、経験者でなくても活躍できるのもボートの魅力だ。
(一番左が粉川さん)
中高は美術部で、大学からスポーツを始めることに不安はありましたか?

 ほとんどの人が初心者と聞いていたこと、最初にエルゴメーター(陸上でボートの動きを再現するマシン)を引いた時に褒められたことで、ほとんど不安もなく入部しました。実際、1年生の初めの頃の練習は、受験でほとんど運動してこなかった人のために組まれているので、中高と運動部ではなくても無理なくついていけました。

 スポーツ経験がない自分にとって、運動部というのは大きな憧れでした。同じように感じている方もいるかもしれません。スポーツへの憧れを憧れで終わらせるのではなく、思い切って飛び込んでみるには、今が一番良いチャンスです。ぜひ今、挑戦してみてください。

東大漕艇部での4年間を振り返って、最も印象に残ったことや感動されたことは何ですか?

 印象に残っているのは、4年生の全日本選手権に向けて練習していた時のこと。当時のヘッドコーチが組んだ「スーパーハードウィーク」という鬼のような一週間のメニューがあったのですが、その練習を行っている途中で、ふわっと自分たちと艇とでシンクロできた瞬間が訪れました。きつい練習でしたし、あとでヘッドコーチには「まさか女子がやるとは思っていなかった」と言われましたが(笑)、無駄な力が入らなくなるまで練習したからこそ得られた感覚だったと思います。

 自分がレースに出場して感じた感情は、「悔しい!」とか「期待してくれた先輩やコーチに申し訳ない」というものがほとんどですが、普段から一生懸命練習している仲間がレースで結果を残したり、大学対校戦で勝ったりしたときは本当に感動しました。

東商戦で勝利し、歓喜に沸く東大クルー。本気で打ち込むからこそ、勝利した時の喜びは最高のものになる。左から2人目(漕手の一番手前)が粉川さん。
粉川さんにとって、ボートや東大漕艇部の魅力を教えてください。

 当たり前のように頑張っている仲間の中に過ごせることかなと思います。

大学生活や社会に出てから、本当に一生懸命何かに取り組むという経験はなかなかできません。まわりも頑張っているから、自分も笑顔できつい練習に取り組む、そしてみんなで成長を喜ぶという、とても純粋で貴重な環境を与えてくれた活動だと思います。ボート部で得た仲間は本質的なところで信頼しています。

 現役時代には、時には仲間とぶつかり合うこともありました。私は、男子部の「日本一になる!」という目標に自分の目標を重ねていました。しかし、同期の女子の多くは、日本一でなくても「自分たちが納得できる目標」を見つけること、そしてそれに向けて精一杯練習すること、に惹かれて入部していました。二年生のとき、その認識のずれが露呈し、それまでお互いに感じていた違和感の原因がわかりました。私にとって、それは家族以外の人とぶつかるという初めての経験でした。

 それまで自分が一生懸命取り組んできたこと、例えば高校の時の絵画や受験勉強などは、自分一人が頑張ればどんどん結果がついてくるものでした。しかし、ここで初めて、仲間ときちんとコミュニケーションをとる重要性と難しさということを感じました。今までだったら逃げてしまっていた状況でしたが、周りの先輩にもサポートされながら、そこで正直にお互いの考えを言葉にしたことで、その後の女子部としての団結が強くなったと思います。

女子部の仲間との一枚。共に目標に向かって全力で努力する仲間との繋がりは、かけがえのない宝になる。(後列右から二人目が粉川さん)
ボート部での経験や、女子部主将としてチームをリードされたご経験が、社会人になってどのように活かされていますか?

 自分の限界をきちんと把握した上で、必要な時は100%の力を出す、ということができるようになりました。

 ボートで結果を出すためには、一生懸命練習をすることはもちろん大切ですが、限界がわからずに怪我をしてしまったり、体調を崩してしまっては元も子もありません。同じ艇で練習する選手全員が揃わないと練習ができないので、他のスポーツ以上に一人一人に体調を万全に保つ責任があります。現役選手の時、数えきれないくらい何度も「自分の体調に責任をもて」と言われました。

 このことは社会に出ても同じで、一生懸命に見えても大切なところで体調を崩してしまったり、精神的に不安定になってしまう人は信頼されません。私は特に妊娠・出産を通じて、変化していく自分の体調と精神状態をきちんと把握しておくこと、適切な対処を早めに行うことの重要性を感じました。いきなりやろうと思ってできることではないですし、社会に出てから失敗すると辛いです。それを意識的に練習できたボート部の経験には感謝しています。

 また、女子部主将としての経験は、自分の強みと弱みを把握することに役立ちました。

 私の弱みは、なかなか他の人の苦しみに気づけないこと。今は研究室に30人以上の学生がいますが、意識して一人一人が何を感じているか、困っていないかと見るようにしています。

 逆に強みは、多少大変な仕事でも笑顔で取り組めること。大学教員は研究、授業、学会活動など幅広い仕事を進めていかなければならないので、この強みを生かせる仕事だと思っています。先生が疲労困憊した表情をしていては、学生さんもやる気が出ないでしょうから(笑。

最後に、新入生へのメッセージをお願いします。

 どんなに能力がある人でも、一人で達成できることには限界があります。自分より大きい目標を仲間と共有し、周りの人に引っ張ってもらったり、逆にまわりを引っ張ることで自分の気持ちを強くしたり。漕艇部はそういう環境だと思います。ぜひ飛び込んでみてください。