目標と聞かれた時に言霊の力もあるような気もするので取材やインタビューなどの回答としては「パリ五輪です」と言うようにしています。
しかし本心はと言うとそこまで五輪というものに執着していない自分もいるような気がします。と言うのもこれまでの自分を振り返ってみると長期的に何か大きな夢や目標に向かって生きてきたと言うより、その時、出来ないことや達成したいことに全力を注いだ結果、気がついたら大きな目標まで到達していたからです。今現在思う目標を二つあげるとすると、一つ目は艇と身体をもっとシンクロさせると言うことです。私は艇の安定感が弱く、しばしばバランスを崩してしまいます。その瞬間ボートから楽しいという気持ちが消え、技術を直したい、気持ち良い艇速が出ない、と不快感やしんどさを忍耐する気持ちで漕いでしまいます。海外の選手の漕ぎを見ていると、とても気持ちよさそうに艇と身体がシンクロしています。フォームを見て真似ることは出来ても、その選手が感じているであろう艇と一緒になる感覚は私にはまだ分かりません。それが分かるともっと気持ち良く楽しい世界があるのではないかと思っています。
二つ目は研究目標分野としてイップスに関して研究を深めていきたいと思っています。
イップスはメンタルでの影響も少なからずあります。心理学系にも興味があるのもイップスに関して研究したい理由の一つですが、これまでボート人生の中で、ある時急に思い通りに身体が動かせなくなったり、今まで普通にオールを握って漕いでいたのに急に真っ直ぐ引くことが出来なくなるといった症状に長期的に苦しみ、競技を辞めざるを得なかった選手を身近でみてきました。その時、近くにいながらどうすることも出来なかったことに後悔があり、脳と運動との関係からの知見を得て今後何かに役立てたいなと思っています